【介護離職防止】連載第2回 福祉サービスの活用で介護離職を防ぐ

 近年、社会問題になりつつある「介護離職」について先月15日号より月1回、3回にわたり連載します。

 独立行政法人福祉医療機構の福祉医療の情報サイト「WAM NET」では、介護関係の情報を幅広く提供しています。介護離職を防ぐためには、介護保険などの福祉サービスの積極的な活用が肝となります。ぜひご活用ください。

遅くなるSOS

 父子家庭の40代の従業員。「最近時々時間休を取るな」と思ったら次第に欠勤がちとなり、ついには辞めたいと言ってきました。事情を聴くと「父の介護でどうにもならなくなった」と告白してきました。近隣の目もあって、介護する側もされる側も「家族が介護するもの」と思い込んでおり、福祉サービスの情報もなく、利用できるのかどうかも分からない様子です。

介護についての意識を変える

 日本ではいまだに「家族が介護すべき」という意識が強いですが、専門職による効果的な介護にはご本人の残存機能の維持や回復、社会参加による生きがい創出、家族の介護疲れの緩和などさまざまなメリットがあります。逆に職場の支援もなく、家族や本人が家族介護に固執することで離職を余儀なくされ、身体的にも金銭的にも疲弊して家庭や生活が崩壊していく事例には事欠きません。

まず地域包括支援センターへ相談

 従業員が介護に直面することになったら、職場の使える休暇や制度を示すのとあわせて、福祉サービスは「お世話になる」のではなく「利用するもの」と勇気づけ、最寄りの「地域包括支援センター」に相談することをお勧めください。ここではケアマネジャー、社会福祉士など福祉・介護のプロが、介護保険の手続きはもちろん、例えば家の手すりの改造費などさまざまな相談にのってくれます。

 「WAM NET」の特設サイト「介護離職ゼロの実現に向けて」では、介護保険制度の解説や手続き、全国の地域包括支援センターの情報なども掲載しています。ぜひご活用ください。

https://www.wam.go.jp

独立行政法人福祉医療機構情報事業部長 坪井 七夫

「中小企業家しんぶん」 2020年 1月 15日号より