近年、社会問題になりつつある「介護離職」について月1回連載してきました。今回が最終回となります。
大企業のような法定外の経済的支援などは難しくても、逆に個々の状況に合わせた柔軟な対応ができることはコンパクトな事業所の強みでもあります。
コストをかけず柔軟に
「人手不足だし、手厚い有給制度なども難しいよ」というお声をよくお聞きします。両立支援助成金等の既存の制度をフルに活用することに加え、例のような方法は中小の事業所ならではのきめ細かな対応、かつあまり大きくコストにはねずにできる支援でお勧めです。
理解醸成と休暇制度の組み合わせで
50代の部長職から突然の退職願い。母親の介護に加え、妻の入院で限界だそう。営業の中心で簡単に替えの効かないポストなので、事業所にとっては大変な打撃です。
まずは福祉サービスの利用を勧め、地域包括支援センターに相談することで介護保険制度の利用につなげ介護の体制を再構築しました。社内では本人の了解のもと職場内の理解醸成のための研修会を開催した上で、福祉サービスの提供状況等に合わせて、まずは短時間勤務制度を利用しました。給与は出勤状況で換算し職階は部長職のままとしました。
また、これをきっかけに懸案だったフレックス勤務制の導入にも踏み切り、同僚たちの温かい支援の下、元気に勤務を続けています。事業所としても親身に対応でき、大きなコストもかけず貴重な人材の流出を防ぐことができました。
もし休業が必要になった際は、介護休業給付金の活用を勧めるとともに、事業所も両立支援助成金などをフルに活用するつもりです。
WAM NETもお手伝いします
独立行政法人福祉医療機構が運用する「WAM NET」の「介護離職ゼロの実現に向けて」コーナーでは、両立支援助成金等の各種制度情報、職場の理解醸成につながる動画なども掲載しています。ぜひご活用ください。
(https://www.wam.go.jp)
独立行政法人福祉医療機構情報事業部長 坪井 七夫
「中小企業家しんぶん」 2020年 2月 15日号より