【同友会景況調査(DOR)概要(2020年4~6月期)】コロナ大不況なおも拡大 中小企業は危機の深化・長期化の様相

〈調査要項〉

調査時点 2020年6月1~15日
調査対象 2,337社
回答企業 1,068社(回答率45.7%)(建設181社、製造業327社、流通・商業314社、サービス業234社、その他12社)
平均従業員数 (1)40.9人(役員含む・正規従業員)(2)30.0人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。
 好転・悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考えで作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

短期間でリーマン・ショックと同水準の落ち込みに

 日銀の6月短観(全国企業短期経済観測調査)では中小企業全産業の業況判断指数は△33と3月調査の△7から26ポイントの大幅減少となりました。

 DORでも業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は△31→△58、足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)も△23→△49といずれも2期連続の大幅悪化となり、2009年1~3月期のリーマン・ショック時と同程度の低水準となっています。

 次期(2020年7~9月期)も業況判断DIが△58→△60、業況水準DIは△49→△56と大幅悪化は一息ついた予測ですが、中小企業景気は非常に厳しい状況が続きます。(図1・図2)

業種、地域、規模を問わず大幅悪化

 業況判断DIを業種別でみると、建設業が△15→△49、製造業が△39→△64、流通・商業が△34→△58、サービス業が△28→△58と、すべての業種で2期連続の大きな下落となりました。

 地域経済圏別でもすべての地域で深刻な下落となりました。特に近畿、関東での下落が顕著となっています。また、全企業規模でも大きな下落となっており、今期は昨年前半まで堅調だった100人以上の悪化が目立ちました。

生産・消費の低迷の衝撃が価格面にも

 売上高DI、経常利益DI(いずれも「増加」-「悪化」割合)も△27→△55、△25→△54で、調査開始以来の低い水準。生産性を示す指標も急落、中でも製造業の水準が極めて低くなっています。

 また、物価動向も仕入単価の上昇圧力は急激に弱まったものの、売上・客単価も急落しました。売上・客単価については約4年にわたって続いた上昇超過から低下超過に転じ、次期もその傾向は続き、収益面への影響が懸念されます。

人手の過不足感DI、2011年以来の「過剰超過」に

 景況の急激な悪化は雇用環境にも大きな影響が出ています。人手の過不足感DIが今期は△31→4と、これまでの強い人材不足感から一転、一気に過剰超過となりました。これは2011年4~6月期以来のことで、特に製造業は△10→25と激変しました。一方、建設業は△60→△30と緩和されたものの依然不足感が続いているなど、業種によって全く異なる状況が混在しています。(図3)

 正規従業員数DI、臨時・パート・アルバイト数DI(「増加」-「減少」割合)も前期からマイナス水準に転じてさらにマイナス幅を広げ、所定外労働時間DI(「増加」-「減少」割合)も大きく減少しました。

早期の資金調達が功奏、資金繰りの余裕感強まる

 経済環境激変のもとで各種金融支援が行われるなど資金調達環境も容易化が進んだことから、借入金増減DI(「増加」-「減少」割合)が長期資金(△27→22)、短期資金(△8→16)と増加に転じました。一方で資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は3→11と余裕感が大幅に強まりました。6月発表の日銀短観が46年ぶりの悪化幅を記録したのとは対照的な傾向を見せています。理由として、DOR企業が3月時点から積極的に資金調達を行ったことで、資金繰りの余裕感を強める結果につながったと考えられます。(図4)

 一方、設備投資は不足感を弱め、実施割合も前期に見込んだ計画割合を下回る結果となりました。実施内容では「情報化設備」の上昇が目立ち、緊急事態宣言下での外出自粛要請などの影響も見られました。

苦境打破へ向け、次の一手を!

 経営上の問題点は、今期、「民間需要の停滞」、「取引先の減少」「その他」が上昇、「従業員の不足」、「人件費の増加」、「仕入単価の上昇」が低下しました。(図5)

 苦境打破に向け、経営の力点として大きく指摘割合が上昇したのは「新規受注(顧客)の確保」、「情報力強化」、「人件費以外の節減」でした。

 今後の不透明感が強い中、現況を冷静に捉え、業務の工夫やデジタル化の進展を活用した「感染拡大の防止」と、新しい需要を取り込み「経済回復」の好循環をめざすべく、次の一手に取り組まれている事例が自由回答で多く寄せられました。

〈現況を冷静に捉え、今後につながる一手に ~会員企業の取り組みから〉

○社内の情報化について、なかなか切り換えの決断ができずにいたが、ZOOMでの会議や打ち合わせ、インスタライブなどを活用し、直接会えなくても伝える方法が多くなり、成果にも結びついた(秋田、不動産業)
○工事受注金額がダンピング状況に陥る可能性が高いため、価格競争に打ち勝つための仕入単価を下げる対策を取る(三重、建築工事業)
○コロナの影響で地方都市への移住や自宅改修等への受注につながっている(岡山、ガス、住宅設備機器)
○感染症対策として緊急事態宣言発令中は、出勤と在宅勤務の2班体制を急遽実施したが準備していなかったため、在宅勤務時の生産性はほぼ0であった。現在、リスク管理として在宅勤務でも生産性が維持できる準備をしている(岩手、配電盤、制御盤の設計・製作)
○「新しい人材の採用が期待できないので社内での育成が重要と考えている。人材の育成や教育、評価と体系立てたシステム化に取り組む(長野、精密部品加工業)
○新型コロナウイルスにより民間需要が落ち込みつつあり、官公需の営業強化により受注を確保する(島根、地質調査・建設コンサルタント)

「中小企業家しんぶん」 2020年 8月 5日号より