【連載】強靭な組織をつくる!第5回(最終回)これからのビジネス継続(BC)の考え方

一般財団法人危機管理教育&演習センター 理事長 細坪 信二

 連載「強靭な組織をつくる!」。第5回目は、前回までに引き続き細坪信二氏(一般財団法人危機管理教育&演習センター理事長)より、「これからのビジネス継続(BC)の考え方」をテーマに考えます。

「需要蒸発」にどう対応するか

 新型コロナウイルス感染拡大がきっかけとなり、さまざまな環境の変化に見舞われている。業種別にみると、飲食・宿泊・旅行業者では売上が激減し、まだ先が見えない状況下で需要自体が無くなるという「需要蒸発」が発生している。いずれは元の状況に戻ると考え、雇用調整助成金や金融機関からの融資で耐えしのいでいるが、長期化により既存事業の継続を見極めなければならない時期が来ている。

 外食チェーン大手のワタミは、居酒屋から「焼肉の和民」に業態転換することを大きく打ち出した。渡邉会長いわく「コロナの先は、ハイパーインフレが来る。ハイパーインフレに備えたビジネス継続(BC)が必要である」。また、単に業種転換しただけではこの先、生き残ることができない。次なる一手として、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市に、体験型テーマパーク「オーガニックランド」を立ち上げ、地域とともに6次産業化に取り組んでいる。

ビジネス継続(BC)は時代とともに変化する

 身代金を要求するサイバー攻撃は、以前はテロリストの活動であったが、最近では金儲けのツールとなっている。コロニアル・パイプラインがランサムウェアによるサイバー攻撃を受け米東海岸の燃料供給が一時停止したことは記憶に新しい。規模を考えると単独ではなく分業化されており、身代金を分配してビジネス化しているのだ。コロナ禍において大地震や豪雨、火山の噴火などの自然災害に見舞われているところに、サイバー攻撃に襲われる可能性もある。このような複合災害に見舞われてもビジネス継続(BC)ができる体制と準備を、従来の自然災害を中心に策定してきたBCPにどう反映していくのか、大きな転換期を迎えている。

 カーボンニュートラルの問題についても注目しなくてはならない。

 各国が2050年に向けて動き出しているが、日本は火力発電の比率が高く、8割が火力発電に依存していることから、カーボンニュートラルの排出権利を購入する動きが必要であり、それによってコストアップにつながることが予想され、既存の製造事業の継続に大きな影響を与えるであろう。

 ビジネス継続(BC)は時代とともに変化するものである。20年前のビジネス継続(BC)には環境の変化やカーボンニュートラルは含まれていなかったが、今後このような課題に対してもビジネス継続(BC)戦略として検討しなければならない。

中小企業家同友会に期待すること

 政府は、成長戦略の実行計画の中で両利き経営(新規事業・既存事業)を掲げているが、同友会の皆様ならもう1本追加して「地域課題を解決する事業」が必要であろう。震災後に加速した高齢化・人口減少・地域の疲弊も、コロナ禍で起こった観光・飲食の蒸発需要も過去に経験がない。しかし、どれだけ困難な状況に見舞われても、重要なことは起きた事象に関係なく前を向き、ゴールを明確にし、生き抜いてビジネスを継続させていくこと、災害時に地域が困難な状況であるならば、地域社会に貢献すること、それが企業の使命であり、企業存続の意義でもある。これからのビジネス継続(BC)を経営指針と融合し、地域課題を解決していく企業であることを期待している。

〈プロフィール〉 細坪信二(ほそつぼしんじ)氏

・一般財団法人危機管理教育&演習センター 理事長
・特定非営利活動法人事業継続推進機構 理事
・(株)Team HOSOTSUBO 代表取締役

「中小企業家しんぶん」 2021年 7月 5日号より