気候危機への対応は「待ったなし」~今こそ「中小企業家エネルギー宣言」の実践を

 地球温暖化に歯止めがかからない中、世界的に異常気象が続き、毎年各地で被害が多発しています。

 世界気象機関(WMO)によれば、2020年の世界平均気温は2016年と並び、観測史上最高を記録しました。そして国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気温上昇が想定より早く進んでおり、人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と指摘し、現代社会のあり方に強い警告を発しています。

 世界自然保護基金(WWF)は「生きている地球レポート2020」で人間の生活や経済活動で消費し廃棄する量を測る指標である「エコロジカル・フットプリント」を分析。1970年以降、人間の消費や廃棄の量は地球が生産し吸収できる量を超えて増加し続け、2020年には地球が1年間に生産できる範囲を約60%オーバーしているとし、地球環境は深刻な状況であることに警鐘を鳴らしています。

 世界や日本国内では多くの自治体が気候非常事態を宣言。2020年11月には日本の衆参両院で気候非常事態宣言を決議しました。与野党超党派の議員連盟が準備してきたもので、決議では「もはや地球温暖化問題は気候変動の域を超えて気候危機の状況に立ち至っている」と強い危機感を表明しています。

 このような危機的状況を背景に、今年11月に国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催されました。交渉は難航しましたが、最終的にはグラスゴー気候合意を採択。産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求することを明記しました。気候危機を乗り越えるには「この10年が決定的」と言われる中、改めて世界各国に本格的な対応を求めました。

 日本政府も2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを表明。今年10月に公表した「第6次エネルギー基本計画」では再生可能エネルギーによる電源の現状からの倍増をめざし、主力電源化することを掲げました。

 コロナ禍からの復興に際してグリーンリカバリーを求める動きも強まっています。国際エネルギー機関(IEA)は『持続可能なリカバリー(経済復興)』を発表。持続可能性を重視した施策に3年間で3兆ドルを投じれば、世界のGDP成長率を、年平均で1.1%増加させる効果があることを指摘しています。

 私たちは今から5年前、2016年の中同協第48回中同協定時総会(大阪)で「中小企業家エネルギー宣言」を採択しました。そこでは「エネルギーシフトで持続可能な社会」をつくることを基本理念として掲げ、(1)「命と暮らしを基本とした新しい持続可能な経済社会をつくることをめざします」、(2)「原子力・化石燃料に依存しないエネルギーシフトに取り組み、地域と日本の新しい未来を切り拓きます」、(3)「中小企業の力を発揮して、環境経営に取り組み、地域で再生可能エネルギーの創出による新しい仕事づくりに取り組みます」などを宣言しています。

 気候危機への対応が「待ったなし」の状況にある今、この「中小企業家エネルギー宣言」の実践が改めて重要になっています。政府にはエネルギーシフトを実現する政策を求めるとともに、私たち中小企業が実践と連携を通じて全国津々浦々でエネルギーシフトの取り組みを一層広げていくことが今こそ求められていると言えます。

(KS)

「中小企業家しんぶん」 2021年 12月 15日号より