デフレマインド・インフレマインド

 毎年のように、当たり前と思っていたことが覆される世の中になってきました。時代の大きな変化が起きているというより、1つの時代が終焉し、新たな時代の歩みを始める直前にきているというように感じます。

 コロナ禍の中で起きた変化の中で、消費のマインドの大きな変化があげられます。ネット・オンライン市場(EC)の大きな成長と、巣ごもり消費、非接触型の商品・製品・サービス市場が拡大し、単身世帯・家族世帯・シニア世帯向けの消費が増しています。特に所有から共有というシェアリングエコノミーとスマートフォン経済が消費マインドとしての大きな変化です。オンライン市場は今後も拡大するでしょう。コロナ禍において、多くの企業がオンライン市場に新規参入してきており、規格品や一般的な商品はもうすでに過当競争に陥っているようです。家の近くの店で買うということから、ネットで一番安い店で買うということになってきています。ネットが一番近くの店になってきています。どこにお金を使うのかは今後も注視していく必要があります。

 デフレマインドという言葉があります。日本経済は約30年の長期間にわたってデフレであり、それによって世間に浸透し定着してしまった考え方や消費の傾向、まさに消費するときの感情や行動の要因のことです。今後も経済状況があまりよくないであろうと悲観的になる心理状態で、将来への不安など、節約や貯蓄をしてお金をあまり使わないようにするという心理状態となります。また、安い商品を選ぶようになり、企業も価格を下げようと努力する、ほしいものも少し待てば値段が下がるというように考えて消費行動を起こします。

 世界中で物価の上昇が見られます。まさにインフレマインド(期待)への転換が起きています。日銀の「生活意識に関するアンケート調査」によると、1年後の物価について「上がる」と回答した方が約8割に及ぶなど、デフレマインドだった日本でさえ、インフレマインドになっています。物価やエネルギー価格の上昇、品薄・品不足、納期遅れ、物流・生産の遅延など、必要なものは買わないと後に値段が高くなるというマインドになっています。そのような中、経済制裁も相まって、ロシアで生産されるものが断たれています。エネルギー・食料や素原材料の一部などに大きなシェアをもっているだけに、その影響が大きく懸念されるとともに、長期化も想定しなければならない状況となっています。一部では、世界中で食料不足の危険性が迫っていることから、食料備蓄を進める人もいると聞きます。

 企業においても、価格転嫁を急いでおり、価格や物価が上がっていくのは今後避けられません。企業側として問題なのは、同じ商品やサービスなのに価格だけが上がっていると消費者に思われてしまうことです。最初は仕方がないと我慢はしてくれると思いますが、顧客が離れることも想定しなくてはなりません。

 物価の安定は政府と日銀の責任ではありますが、まずは商品・製品・サービスを提供する側の企業への不満につながりかねません。企業としては、商品・サービスをブラッシュアップして、品質や付加価値を高めつつ価格を上げていくことが重要になってきています。

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「中小企業家しんぶん」 2022年 7月 15日号より