6月5日、「中小企業魅力発信月間キックオフ行事~憲章・条例活用推進シンポジウム」がオンライン開催され、会内外から370名が参加しました。来賓あいさつや中小企業団体・労働団体からのあいさつなどを紹介します。
主催者あいさつ
中同協 会長 広浜 泰久氏
本日は多くの方にご参加いただいており、非常にうれしく思っています。私たちは、このキックオフ行事に取り組む意義を3つ掲げています。1つ目は、中小企業家であること、中小企業で働いていることに誇りを持とうということ。2つ目に、中小企業の役割や重要性を広く国民の皆さまに知ってもらうこと。最後に、どんなに頑張っても報われない厳しい経営環境を改善するきっかけとすることです。
この1年を振り返ると、私たちの置かれている状況が大きな転換点を迎えていると感じています。この間、中同協会長としてNHK『日曜討論』に2度出演し、それぞれ人手不足と賃上げをテーマに地域の疲弊と密接に絡めた論議に参加をしました。大企業が5%を超える賃上げを行う中、中小企業とそこで働く社員にもっと目を向け、中小企業も賃上げできる体制にならなければ日本全体がよい社会にならないという議論が、特にこの1年で進んだと思います。
そのような中で、われわれの運動が光を放ってきています。本日は、基調講演と事例報告、そしてグループ交流を通じて、各地域が活性化されて日本全体が元気になるきっかけにしたいと思います。
来賓あいさつ
中小企業庁 長官 須藤 治氏
中小企業家同友会の皆さまにおかれましては、日ごろから同友会理念に沿って精力的に活動されていることに敬意を表します。原材料高や人手不足など、経営環境は引き続き厳しい状況ですが、30年ぶりの水準となった設備投資や賃上げなど、明るい兆しが出てきている今こそ、デフレ構造から新しい経済ステージへ移行する絶好の機会だと考えています。
直近の中小企業政策ですが、まずは価格転嫁対策です。年2回の大規模なアンケート調査に基づく、事業者名の公表や発注企業への指導・助言、下請Gメンの訪問を通じた取引実態の把握、昨年11月には労務費の価格転嫁の指針を策定し、周知などに取り組んでいます。また、賃上げ促進税制を拡充し、最大45%の税額控除に加え、赤字企業でも使える繰越控除措置を創設しました。加えて、人手不足を乗り越えるため、カタログから選ぶ簡易で即効性のある省力化投資支援を今後3年間で、5000億円規模で措置し、今夏から募集を開始します。また、特例事業承継税制における事業承継計画の提出期限を2年間延長、あるいは中堅・中小グループ化税制も創設しています。新たな海外販路開拓を後押しするため「新規輸出1万者支援プログラム」も展開しており、現在1万7000社にご登録いただいています。
来たる7月20日は「中小企業の日」です。中小企業の活力なくして、あるいは中小企業で働く人たちの所得向上なくして日本の未来の元気はないと考えます。中小企業庁は中小企業のチャレンジを全力で応援してまいります。中小企業家同友会全国協議会および会員の皆さまのさらなる発展を祈念いたしまして、お祝いのごあいさつとさせていただきます。
来賓あいさつ
中小企業基盤整備機構 理事長 宮川 正氏
「中小企業魅力発信月間キックオフ行事」のご開催誠におめでとうございます。
今年5月に、中同協の広浜会長と人手不足や価格転嫁、賃上げなど中小企業を取り巻く環境について意見交換しましたが、「中小企業で働く皆さまが誇りを持てるような社会をつくりたい」というお言葉に心より感銘を受け、大いに共感いたしました。中小機構は、中同協や中小企業家同友会の皆さまと手を携えながら、こうした社会の実現に向けて尽力してまいりたいと思います。
昨今の状況ですが、私は「経済の好循環」モードに入りつつあると認識しています。中小企業においても価格転嫁しやすい環境ができつつあり、一定の賃上げが行われています。また、事業拡大など攻めの経営に転じてきていますが、攻めの経営においても、市場開拓、人材確保・育成、DXへの取組、省力化など課題そのものが高度化・複雑化してきています。中小企業家同友会の皆さまの強みは、こうした経営課題に対して互いに知恵を出し合い、本音で相談できる経営者の仲間が全国に4万7000人以上おられることかと思います。皆さまの経営課題解決の一助として中小機構の施策もご活用いただければと考えております。経営に関してお困りごとがございましたら、私どもの地域本部やよろず支援拠点などの支援機関へお気軽にご相談ください。
今年7月には中小機構が誕生して20周年を迎えます。蓄積してきた多くの企業支援に関する専門的な知見と経験をベースに、支援機関や金融機関などとのネットワークを組み合わせた総合的・複合的な支援を通じて皆さまと伴走し、経営課題の解決に向けて全力で取り組んでまいります。本日のシンポジウムが盛会となりますこと、また中同協と中小企業家同友会会員の皆さまのより一層のご発展とご健勝を祈念いたしまして私からのごあいさつとさせていただきます。
中小企業団体あいさつ
日本商工会議所 中小企業振興部長 山内 清行氏
中小企業魅力発信月間キックオフ行事のご盛会、誠におめでとうございます。
「中小企業の魅力」の発信は、今まさに大変意義のある取り組みであります。コロナ禍を克服し、活動が完全回復し、金利のある世界など、経済も正常化に向かっています。停滞から成長への転換局面、経済を好循環型に変えていく必要があります。しかし、円安に伴う物価上昇など、中小企業にはコストアップ型で大変厳しい状況です。人手不足も、特に地域で加速しています。一方、中小企業は自己変革力があり、これらの課題を克服していくことができるものと信じております。商工会議所は新たな挑戦を、皆さまとともに、ビジネス改革など、伴走支援してまいります。
中小企業は、民間雇用の7割を担っていると言いますが、3大都市圏を除く地方部では9割を担い、9割を超える地域も多数あります。中小企業は生産、雇用、消費・投資など、地域経済循環の担い手です。
さらに中小企業は、販売や調達等の事業活動を立地域に依存し、経営者や従業員の多くが居住者です。伝統文化・技術、防災・減災、地域のにぎわいや地域コミュニティなど、地域多様性の源泉でもあります。地域貢献企業、地域の生活インフラ、魅力の創出に貢献していることに、経営者、従業員1人1人が誇りを持ち、変化の激しい時期だからこそ、ビジネスチャンスを敏感に感じ取り、フットワークの軽い中小企業が世の中のニーズに応えていくことが、最も重要であります。ここにこそ、日本、地域の牽(けん)引パワーがあると考えます。
今こそ、中小企業を軸とした成長の実現をめざしてまいりましょう! パートナーシップ構築宣言を通じ、価格転嫁など取引適正化の整備も必要です。商工会議所は引き続き、中小企業を全力で支援してまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
中小企業団体あいさつ
全国商工会連合会 産業政策部産業政策課課長 吉本 嘉晃氏
本日は中小企業魅力発信月間キックオフ行事が盛大に開催されますことお喜び申し上げます。さて、元日に発生しました能登半島地震は発災から5カ月を経ましたが、いまだ事業再開できていない事業者がいるなど、復興半ばとなっております。被災者・被災事業者の真の復興に向けては、息の長い支援が必要です。
また、中小企業・小規模事業者は物価の上昇や深刻化する人手不足などの影響により依然として厳しい環境が続いています。私ども商工会、令和6年度におきましては、自己変革に挑戦する事業者に対して、経営計画策定支援を中心とした伴走型支援の強化を図っていくとともに、国内外、特に能登半島地震で被災された事業者の販路確保に向けた支援等を実施してまいります。加えて、変化する経営環境への対応を図るため、確実な支援策が講じられるよう、各方面への要望活動を積極的に展開しているところです。
さらに、喫緊の課題である創業・事業承継支援や地域の担い手となる若手・女性経営者に対する支援を実施していくとともに、頻発する大規模な自然災害などに備えて、事前事後の対応を促進していくためのリスクマネジメント支援も取り組んでまいります。
以上を踏まえまして、今後も中小企業家同友会の皆さまと連携できる部分で情報共有・意見交換等をさせていただき、中小企業・小規模事業者支援につなげていければと考えております。
結びになりますが、中小企業家同友会のますますのご発展を心よりお祈り申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。本日は誠におめでとうございます。
中小企業団体あいさつ
全国中小企業団体中央会 常務理事 及川 勝氏
中小企業魅力発信月間キックオフ行事が斯くも盛大に開催されましたことを心よりお喜び申し上げます。
中小企業家同友会全国協議会の皆さま方が1975年に発表されました「労使見解」を原動力としまして、今日掲げる「人を生かす経営」を実践するための諸活動を毎年着実に広げられておられますことを深く敬意を表する次第でございます。
全国中央会では中小企業組合による価格転嫁に向けた団体交渉、あるいは人口が急減している地域における事業の維持のための人材派遣を行う地域づくり組合の設立、そして生産性向上に向けたものづくり補助金の事務局に加えまして、カタログ方式による省力化補助金の執行という新しい事業を始めることとなりました。
そのためにも関係各機関とのシームレスな面的な連携が必要になってまいります。本行事の開催が関係機関との一層の連携強化になりますとともに、数多くの方々に中小企業の社会的意義とその魅力を実感していただく機会になりますことを心より祈念申し上げます。
本日のご盛会、誠におめでとうございます。
労働団体あいさつ
日本労働組合総連合会 事務局長清水 秀行氏
本日は、中小企業家同友会全国協議会の中小企業魅力発信月間キックオフ行事が盛大に開催されますことを、心からお祝い申し上げます。
さて、1月1日に発災した令和6年能登半島地震について連合は、要請行動やカンパ活動に取り組み、3月からボランティアを行い、5月からは、珠洲ボランティアセンターへの派遣体制を拡大するとともに、6月からは輪島市を加えた2つの地域で活動をしております。
毎年春季生活闘争時に行っている中同協との意見交換は、今年は4月24日に開催し、昨年に引き続き、『中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話』を、両組織で4月から地方に展開させていただきました。
中小企業振興基本条例の取り組みにつきましては、2023年は、9地方ブロック連絡会や各種委員会での条例学習会を開催いたしました。
2024春季生活闘争では、1991年以来となる定昇込み5%台の賃上げが実現しました。産業・企業、さらには日本経済の成長につながる「人への投資」の重要性について、中長期的視点をもって粘り強く真(しん し)摯(しん し)に交渉し、主体的に大きな流れをつくった結果と言えます。企業の成長の原動力となる人への投資を起点とした経済の好循環を引き続き進めていかなければならないと感じております。
連合は、中小企業の経営基盤の強化と地域の活性化に向けて、「笑顔と元気のプラットフォーム」の取り組みを5年前から行っており、今後も、継続して取り組んでいきたいと思います。
本日の中小企業魅力発信月間キックオフ行事を通して、中小企業の存在意義や魅力などに関する正しい理解が地域に広がっていくことで、中小企業家同友会に加入する企業がますます発展されることをご祈念申し上げ、あいさつに代えさせてただきます。
本日は、誠におめでとうございます。
労働団体あいさつ
全国労働組合総連合 議長 小畑 雅子氏
本日は中小企業魅力発信月間キックオフ行事開催おめでとうございます。引き続く物価高騰、資材不足、円安などさまざまな困難のもとでも、地域経済の発展のために日々奮闘する中小企業家同友会の皆さまに深い敬意を表します。
2024国民春闘では長く続く低賃金と物価高騰から労働者、国民の生活を守るために大幅賃上げ・底上げ、子育て支援、医療・介護・年金をはじめとした社会保障の充実を求めて闘ってまいりました。その中で価格転嫁も大きな課題の1つとなりました。全労連は中小企業で働く労働者が人間らしく生き、働くことと中小企業の発展を一体のものとして進めることが地域経済の活性化につながると考え、そのためにも国・自治体による中小企業への支援を抜本的に強めていくべきだと訴えて取り組みを進めています。
その一環として労働力確保のためにも、地域間格差をなくし、地域経済を活性化するためにも全国一律最低賃金制度の確立が必要であると考え、最低賃金法の改正を求める運動を強めているところです。改正の4つのポイントの1つに、「中小企業に関する取引の適正化、財政上、税制上および金融上の支援措置その他の必要な措置を講じなければならないことを義務付けること」を掲げ、国会議員や地方議会、厚生労働省や労働局への働きかけを強めています。
毎年のこのキックオフ行事に参加させていただき、働く仲間と地域づくりを何よりも大切にする中小企業家同友会の姿勢に学ばせていただいております。
「中小企業は経済を牽(けん)引する力であり、社会の主役である」と位置付けた中小企業憲章の理念を共有し、引き続き中小企業家同友会の皆さまとさまざまな場面で交流をさせていただきながら、共に地域経済の好循環を生み出す取り組みを進めさせていただきたいと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
まとめ
中同協 中小企業憲章・条例推進本部 副本部長 加藤 洪太郎氏(愛知)
この運動は、2003年の中同協第35回定時総会(福岡)で提起されて以来、7年間にわたって全国で学習運動を重ね、2010年の憲章閣議決定の実現に至りました。同年の中同協第42回定時総会(大分)では、日本国民を主語とした憲章草案が提案され、国会決議に向けて進むことを確認しました。そして、憲章の理念実現のために中小企業振興基本条例を制定しようと各地域で運動を展開し、現在では全国で40%を超える自治体で条例が制定されています。憲章・条例運動の提起から21年が経過しますが、この間、同友会は会員増強が進みました。地域と日本経済を担いうる中小企業家になろうという志で運動しているたまものだと思います。
本日のシンポジウムでは、いよいよ新しいステージに進むことができるという強い自信を得られたのではないでしょうか。ご来賓や各団体、各政党からのごあいさつは、これからめざすべき中小企業支援政策について毎年前向きな発言に変わってきています。この運動は、国民1人1人を大切にする豊かな国づくりのために、日本経済を担う中小企業を発展させることが目的です。条例をつくるだけではなく、どのような地域をつくるのか、そこで自社がどのような役割を果たすのかという視点で取り組めば、さらに条例制定自治体が増え、活用も進んでいくと思います。基調講演と2つの事例報告からそのヒントが得られたと思います。
21年前と比べ、中小企業を第一に考慮した国にしていくという確信を得られたシンポジウムでした。天から降ってくるわけではなく、私たち自身が地域の未来を創造する一翼を担いうる企業に自己変革を遂げることで、見えてきた可能性を実現するために、一緒に頑張りたいと思います。
「中小企業家しんぶん」 2024年 7月 5日号より