地域密着で新しい街づくり 用品名酒センター(株)専務 清水美和子氏(広島)

「金持」シリーズで自信深める

 「金持酒(かねもちざけ)」というユニークな名前のお酒があります。総販売は、用品名酒センター(株)(清水美和子専務、広島同友会会員)です。同社の屋上には、全国で1カ所しかない「金持稲荷」があり、ここに集う人々が「全日本金持学会」をつくっています。その中心になっているのが同社の社長、清水徳夫氏です。

 このユニークな取り組みは、商店街の振興の活動から生まれました。商店街の名前は「コイン通り商店街」。商店街を貫く片側一車線の道路沿いに、全国に3つしかない造幣局があることから、この名がつけられました。

 商店街活動は、1985年の広島市との合併以前にさかのぼります。「当時私は、商店街振興組合の理事長(現・会長)をしていた。まずは歩道をカラー舗装した。街路樹にはアンズを選んだ。さらに車で店に乗り付けやすくするために、歩道と車道との境目の段差をなくした。そりゃあ、行政は渋りましたよ。面倒だ、ルールがあるってね。でも簡単なことや決まったことをするために、あんたたちを高い給料で雇っているんじゃない。難しいからお願いしているんだって励ましてね」。

 こうした活動の中、バブルが弾け、郊外型店舗も出店。古い商店が廃業し、サービス業のお店が増えていきます。新しい街づくりの必要性を感じた清水氏ら組合幹部は、地域の人々を巻き込もうと、組合幹部に町内会長、地主などを加えた「コイン通り街づくり委員会」を結成、毎月1回の会合を続けてきました。

 「金持酒」の発想は、この委員会で出たもの。「コイン通りの名前を生かした名物を作りたい、と考えていました。たまたま鳥取県に『金持(かもち)神社』があるという話を聞き、そこで開運祈願をしてもらったお酒を売り出そう、ということになったんです」。「なぜかお金が溜まりだした」「宝くじがあたった」「経営がうまくいきだした」など霊験あらたかと噂の高い「金持酒」に続く「金持」シリーズは、「麦酒」「羊羹(ようかん)」、ワインにまで広がり、「金持羊羹」のパッケージは、今年の広島市グッドデザイン賞の大賞を受賞しました。

 「われわれのような小さな酒屋は、何か特徴をもたなければ生きていけない。その意味で『金持酒』の意味は大きい。今後も可能な限り商品展開を考えたい」。

 金持酒ができたことで、街づくり委員会も自信を深めました。現在、「あんず祭り」「金持祭り」を行うほか、商店街を花で飾る運動や、「春の小川大作戦」で造幣局の側溝に花や水質浄化に役立つ草を植えたりしています。「商店街は地域密着が生き残りのテーマ。普段から住民や行政とも仲良くしていかないとね」と清水氏は語っています。

会社概要

創業 1911年
資本金 1000万円
年商 1億3000万円
社員数 7名(パート含む)
業種 全酒類小売業、「金持酒、金持羊羹、金持麦酒」総発売元
所在地 広島市佐伯区五日市4-18-18
TEL 082-921-0027
URL http://shop.sfriend.ne.jp/~kanemochizake/

「中小企業家しんぶん」 2006年 1月 15日号より