経営指針の実践で新規事業構築 (株)やまざき社長 北村卓也氏(京都)

経営指針の実践で新規事業構築
婚礼衣裳製造卸から結婚式場経営へ
(株)やまざき社長 北村卓也氏(京都)

 「経営指針という概念が自分の頭の中になかったら、つぶれそうな会社に戻る気にはならかったと思います」。現在、北村卓也氏(京都同友会会員)は社長として、京都市内の「烏丸御池」駅近くにある、婚礼衣装製造卸の(株)やまざきと、その本社の一部を改装してチャペルや写真スタジオ、貸衣装業を行う(有)ベルブライトの2つの会社を経営しています。

先代のカリスマ性と景気に支えられ

 北村氏は、創業者である山崎義昭社長(当時)に採用され、1977年20歳の時に(株)やまざきに入社。先代社長のカリスマ性と少数精鋭の営業力で業績はうなぎのぼり、北海道や東京、福岡にも拠点を持ち、94年には自社ビルを建設しました。

 しかし、バブル景気の終えんとともに、「地味婚」や婚礼費用の低価格化で取引先の貸衣裳業は仕入れをストップし始め、やまざきの売上も92年をピークに減少。営業で得意先を回っていた北村氏は、危機感から新たな事業展開を次々提案します。しかしながら、当時の社長は経験主義で北村氏の提案をまったく認めませんでした。

独立して同友会で学んだ経営指針

 北村氏は社長との方向性の違いから、辞職を決意。97年にのれん分けの形で独立しました。

 従兄弟の奥井信明氏(故人、当時京都同友会副代表理事)の経営する印刷会社の1室に事務所をおいていたこともあり、付き合いで、同友会に入会しました。

 入会当時の支部例会は、納涼会や飲み会が続き、北村氏は「同友会は経営者の懇親の場だ」と思い込んで同友会に通っていました。やがて、「経営も順調に行き始め、小銭が自由になってきたころ」、当時の支部長に「あんたの会社、このままでは潰れるわ」と言われ、大ショックを受けました。「そこで経営を本格的に勉強しようと思い、同友会の先輩に経営指針を作ることを教えてもらいました。まずやりたいことを時系列的にプライベートと仕事に分け、月別に分けて書く。そこに数値目標を入れ、その年にやることが明確になってきました」と北村氏。

 しかし、それまでついてきてくれた社員が辞め、何のための会社だったのか、社員と一緒にもう1度考え直して経営理念も作り、軌道に乗り始めました。

古巣の会社に戻り再建へ

 99年にやまざきの社長が急死。息子が後を継ぎましたが、羅針盤を失った会社は方向性を見失い、失速していきました。

 北村氏は新社長の経営相談にも乗ってはいましたが、その家族にも請われて、2003年6月専務取締役としてやまざきに復帰。

 「個人的な収入が半分以下になることもあり、妻は大反対しましたが、今の自分があるのも先代のおかげ。やまざきにはまだ資産があったので、経営指針をつくれば何とか立て直せると考え、戻りました」。

 旧本社の売却や金融機関の支援で持ちこたえてきたやまざきでしたが、北村氏は復帰1カ月後の7月には年度末までの経営計画を発表。月1回の割合で営業の幹部会議を開き、毎回レポート提出を義務づけ、問題点の洗い出しを幹部全員で行いました。しかし、「あんたのやり方にはついて行けん」と幹部は次々辞めていきました。

外部環境を見定め新規ビジネスモデル構築

 一方、危機感を共有した一部幹部は「よう分からへんけど、やりましょう」と北村氏の方針に賛同。6月には福岡店を閉鎖。12月には社内で経営指針発表会を行うとともに、本社ビルを改装して(有)ベルブライトを立ち上げ、翌年2月より営業開始。同年1月からは、衣装リース事業も開始しました。

 「一見、ベルブライトはこれまでの取引先(結婚式場)の仕事と競合するように思われますが、女性がしてほしい結婚式のイメージを大事にし、社員は女性だけ。取引先にはベルブライトのノウハウを公開し、歓迎されています」。平日限定教会式プラン・30名を4万8000円という安さで売り出し、ひとつのビジネスモデルをつくっているベルブライト。

 昨年9月に2代目社長が急逝し、北村氏が2つの会社の社長に就任することになりましたが、新規事業はエンドユーザーにも周知され、社員教育も進み、客単価も向上。今年度は粗利益率70%となる勢いです。

 「今後は経営指針の全社での実践を強みに、得意先や商品を見極め、花嫁衣装を重視していきたい」と決意も新たに、今月6日、第4回経営指針発表会を行いました。

経営理念

一、私達は常にお客様の満足を目指し、喜ばれることを考え、実行します。
一、私達は常にお役に立つことを心掛け、取引先の満足、働く社員の満足を目指します。
一、私達は常に前向きな気持ちで、明るく元気に臨みます。

【会社概要】
設立
 1969年
資本金 2800万円
年商 5億円
社員数 22名(パート含む)
業種 和装婚礼衣装専門製造卸・呉服卸、小売
所在地 京都市中京区衣棚通御池上ル下妙覚寺町195
TEL 075-241-0296
URL http://www.kyo-kimono.com/

「中小企業家しんぶん」 2007年 1月 15日号より