―まず地域の特徴をお聞かせください。
畠山 北和支部は、奈良市をはじめとした4市3町1村からなり、大きくは観光に代表される旧市街地と、大阪のベッドタウンである新興住宅地に分かれます。
東大寺、薬師寺、平城宮跡など多くの世界遺産を抱えていますが、“大仏商法”とも言われるように、あぐらをかいていて企業努力が足りないとの批判もあります。同友会の行事で奈良を訪れる講師の皆さんからも、観光産業に携わる方々のマナーの悪さ、サービスの質、人との交流のつたなさなどを指摘されます。
それを克服するには、私たち地元の人間が奈良のことをよく知ることだと思います。知ることで地域を愛せるようになります。
―同友会入会のきっかけは。
畠山 入会は1989年です。ちょうど技術者から経営者への脱皮を求められていた時期で、経営者が真摯(しんし)に学ぶ姿にひきつけられました。
討論から見えてきたのは、自分が求めていた“人間尊重の経営”であり、民主的な経営の姿でした。
3年目くらいで役員になった時は、よほど人材不足の会なのだと思いましたが……。
―同友会で学ばれたことは。
畠山 「強いる教育」「教える教育」と、「共に育つ」ことのちがいを知ったことですね。
アメとムチを使い分けたり、ほめまくるという手法ではなく、本当の意味で人にやさしいとはどういうことかを真剣に追求するようになりました。
結局、自分に厳しくなければ、人にはやさしくできない。私自身が人間としてどう生きるかが問われているということがわかりました。
設立当初は“自分のため”の経営でしたが“社員のために”と変わり、今では「地域の人々のために生きる」という価値観に私が変わり、会社も社員も変わっていきました。
―支部活動の特徴を。
畠山 人間にやさしい企業と地域づくりを柱に、4Kとビジネス交流を追求しています。
4Kとは、環境、観光、高齢化、金融をさします。
1月には、支部設立15周年記念事業として、評論家内橋克人氏の「新たな事業価値」をテーマにした講演会、ビジネスフェアなどを開催し会員、市民約700人が集いました(本紙2月15日号で既報)。
成功した要因の1つには、昨年3カ月かけて、支部3役と協力して、役員40人の会社を訪問したこともあったと思います。
会社へお邪魔すると、喜んで裸になって話していただき、自分に近づいてくれることを実感しました。
―最後に今後の抱負を。
畠山 2005年には、中同協主催の全国女性経営者交流会(仮称)を、奈良同友会が担当して開きますが、それまでには500名の支部にしたいと考えています。そのためにも1泊での役員研修会を充実させていくつもりです。
▼北和支部の概要
設立 1988年
会員数 280社
役員数 40名
対象地域 4市3町1村(人口70万8000人、企業数3800社)
「中小企業家しんぶん」 2004年 3月 15日号より