新発想のドラム缶再生・回収システム (株)アップコーポレーション社長 伊藤眞義氏(東京)

新発想のドラム缶再生・回収システム
「地球環境に貢献したい」の一途な思いで
(株)アップコーポレーション社長 伊藤 眞義氏(東京)

二重構造のMPドラム缶で再利用回数も増

 (株)アップコーポレーション(伊藤眞義社長、東京同友会会員)では、画期的なドラム缶リサイクルシステム「MPシステム」を開発し、2005年「経済産業大臣賞」「エコプロダクツ優秀賞」に続いて、2006年には、「環境大臣賞」を受賞しました。

 このMPシステムとは、インキなどを充填(じゅうてん)する従来の鋼製ドラム缶を二重構造とし、内側に厚さ0・23ミリ、重さ3・5キロほどのブリキの内装缶(MP缶)を装着したオープンドラム缶(MPドラム缶)と、使用済みドラム缶を印刷会社などから確実に回収し、内装缶を新しいものと入れ替え、再びインキなどを充填し出荷していくというリユース・システムの構築から成り立っています。(図)

 伊藤社長は、ドラム缶の再生事業を営む伊藤社長の父・昭平氏の経営する(株)イトウが、業界でいち早くISO14001の認証取得する際、さまざまな問題点を深く認識。環境に優しいリユースシステムを構築するため、2001年に(株)イトウから独立しました。

 ドラム缶の再生方法には洗浄と焼却の2通りありますが、いずれも環境リスクの高い方法です。「このままでは業界としての将来性がない。そもそも洗浄しないでもできるドラム缶の再生方法はないか」と考案したのが、二重構造のMPドラム缶です。

 これは、ドラム缶に充填した物が直接触れる内側の内装缶(MP缶)だけ新しいものに装着し直せばよく、危険な洗浄作業は不要です。しかも、内装缶は常に新品なので、前にどんなものがそのドラム缶に充填されていたかをまったく気にせず、再充填が可能。再利用できる回数も、従来の4~5回から現在7~8回くらいまでになり、エコマークも取得しました。

確実に回収・再生できるシステムに

 MPドラム缶という容器を考案しただけでは、確実にその容器が再生のために戻ってくる保証はありません。しかも、これまでリユース(再生)の優等生だった鋼製のドラム缶の循環の流れが、新ドラム缶の厳しい価格競争や、鉄の国際的供給不足などのため、崩れ始めているのです。

 「これ以上ドラム缶再生の循環が破壊されていけば、環境破壊につながりかねない」と考えた伊藤眞義氏は、MPドラム缶を確実に回収し、再生工場に戻し、リユースしていくシステムを構築したのです。

大手メーカーとも連携

 まず、インキメーカー最大手の東洋インキ製造(株)との間で、このシステムを導入。現在、同社のオフセットインキのドラム缶のほとんどがMPドラム缶です。

 システム設計と回収は、アップコーポレーションが行い、MPドラム缶の製造・装着・脱着は、MPドラム缶の製造許諾契約を締結した(株)イトウ(東日本地域)と、京都空罐工業(株)(西日本地域)が行っています。

 外側のドラム缶(外装缶)は、パートナーであるJFEコンテイナー(株)が製造し、内側のMP缶は、MP製造(株)((株)イトウとJFEコンテイナー(株)が半々出資して設立)が、製造。これを新しい外装缶や、使用済みMP缶をきれいに取り外し、整備した外装缶に装着し、MPドラム缶の完成です。

なお、使用済みMP缶は、産業廃棄物として適正処理されます。

社会を循環型システムへ変えていく壮大な挑戦

 今後、東洋インキ製造以外のインキメーカーにも利用を広げるとともに、化学メーカーなど、ドラム缶を利用する業界に、このMPシステムを広げていくことが課題です。

 また、内装缶には、現在錫(すず)メッキされたブリキが使われていますが、「もっと安く、もっとさまざまな内容物を充填しても耐えられるような新素材も開発していきたい」と話す伊藤眞義氏。

 企業理念には「人類が健康と安全で豊かな生活が営める、美しい地球環境づくりに貢献して」いくことを掲げる(株)アップコーポレーション。「ここに来るまでには人に言えないほどの苦労もあったが、地球環境をこれ以上悪化させたくない、社会に貢献したいという一途な思いで、(株)アップコーポレーションと夢を一緒に成就していこうと、社員と共に取り組んできた」という父の事業にかける情熱と夢を受け継ぎ、大手メーカーを巻き込みながら、業界全体の流れを循環型社会へと変えていこうと、壮大な挑戦が始まっています。

【会社概要】
創業
 2001年
資本金 300万円
社員数 4名
業種 ドラム缶の加工・販売、ドラム缶リユースに関する経営コンサルティング
所在地 東京都葛飾区東金町
TEL 03-5648-7155
URL http://www.up-corp.com/

「中小企業家しんぶん」 2007年 1月 5日号から