日常に癒しとゆとりを~ノウハウ生かし温浴事業を多角化 (株)創裕 社長 川北 哲氏(香川)

施設再生で高まる自治体の期待

川北氏

(株)創裕 社長 川北 哲氏(香川)

本業の深掘り

高松ぽかぽか温泉

 「経営理念『ゆとりある生活の創造』は、社員にとって仕事の判断基準であるとともに、企業にとっては追い求める永遠の課題でもあります」。

 西日本を中心に、「ぽかぽか温泉」など9つの温浴施設を経営する(株)創裕の川北哲社長(香川同友会会員)は、時代の変化に伴い、温浴施設経営の本業を深掘りし、今では温浴施設運営受託業務、外食部門、温泉ボーリング等地下水掘削業務なども手掛けています。

 1978年、建築設備会社を兄弟で立ち上げ、93年には(株)創裕を設立。当時名古屋で成功していた「スーパー銭湯」にならい、翌年には高松に「ぽかぽか温泉」を開業。その後、毎年のように店舗展開し、昨年度は佐賀、高知の2カ所に同温泉を開業したほか、和食レストラン「なんなり」、北九州市の「あじさいの湯」や東かがわ市の「ベッセルおおち」の2カ所の施設運営受託など、仕事の領域を大きく広げました。

経営理念と社員の成長が企業の成否を分ける

地下水開発

 同友会との出合いは1994年、「さまざまなセミナーに出て学ぶ中、経営者として学ぶべき姿勢を教えてくれたのが同友会でした」と川北氏。入会後、自らの姿勢を律し、全社的な判断基準とするため、まず経営理念をつくりました。

 「企業にとって経営理念が成否を分ける。社員が社長の顔色を伺って仕事をし始めたら、いい仕事はできない。権限を委譲しつつも、任せっぱなしにはしない。『社長』だからと特別扱いにならないよう、私も社員と同じように出張申請書や休暇等届書を総務に提出しています」と川北氏。毎月の給料日には、自分自身の考えなどを記した手書きの手紙を複写し、社員全員に配布します。

初期投資の増加も協調融資などでカバー

 よりよい施設、立地条件を追求していく中で、建設費はいまや1施設当たり10億円の初期投資が必要です。その上、建築基準法改正で着工が遅れ、資材の値上がりなどで当初予算より1割も割高になるなど、環境変化が経営に大きな影響を及ぼしてきています。

 そうした中、莫大な初期投資の資金調達は、(株)創裕の実績や川北氏の手腕が広く認められ、保証付き私募債の発行や地銀・信金などによる協調融資など、金融機関の積極的な融資姿勢に支えられています。

ライバル3セク施設を運営受託

 20年前、全国の市町村に1億円ずつ分配された「ふるさと創生事業」などでつくられた健康福祉施設が、第3セクターで運営されてきましたが、老朽化した上、維持費が自治体財政を圧迫しています。(株)創裕では先の「あじさいの湯」など、そうした施設リニューアルを手掛け、運営支援を受託しています。

 ぽかぽか温泉のライバル施設でもありますが、「商圏の存在、5~10年の設備維持、改修への行政の協力体制などを見極め、受託するかどうかを判断する」と、川北氏はいいます。

 「中小企業の生き延びる道は、環境変化に応じた、経営理念にのっとった事業転換。経営者は同友会で自己改革し、変革と挑戦を怠らないこと。そうしなければ、これからの時代、企業として残ることもできなくなります」と決意を込めた表情で話します。

 川北氏は、7月の中同協第40回定時総会で第10分科会「雇用の安定と創造が企業使命」の報告者も務めます。

会社概要

設立 1993年
資本金 4200万円
年商 26億5000万円
社員数 256名
業種 温浴事業及び運営受託業務、外食事業、ボディケア事業、地下水開発事業
所在地 高松市朝日新町17番15号
TEL 087-811-0033
http://www.souyu.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2008年 4月 25日号より