公共事業の入札時や参加企業評価時に、子育て支援企業や社員の仕事と生活の調和を図る企業に加点する自治体が増えてきました。「仕事と生活の調和推進企業」として県の表彰を受けた福島県棚倉町の中堅ゼネコン・藤田建設工業(株)の人事戦略と、内閣府男女共同参画局が昨年度各自治体に対し行った「公契約におけるポジティブ・アクションに関する調査」、及び福島県の入札改革などを紹介します。
地域の雇用守り、土木施工管理技士80名~仕事と生活の調和推進企業の県認証も
藤田建設工業(株) 社長 藤田 光夫氏(福島)
有資格者が社員の7割
「仕事は仕事でとれ」を社是とする藤田建設工業(株)(福島同友会会員)では、164名の社員のうち120名が有資格者で、1級土木施工管理技士が60名(2級は20名)と、福島県下で2番目に多くの技士を抱えています。
「よい仕事をすれば、次の仕事や他社からも仕事を頼まれることになる。社是はそういうことを意味しており、公共事業が右肩下がりで減るなか、民間での新たな仕事を受けていくためにも、1つひとつの仕事を丁寧に最後まで責任を持って仕上げられるよう、社員の資格取得を支援し、男女にかかわらず、現場に出し、教育を徹底しています」と藤田光夫社長。
女性も働くのが当たり前
昨年7月、同社は福島県第1期次世代育成支援企業認証の「仕事と生活の調和」推進企業認証を受けました。同社の「介護休業が最大一00日取得可」「過去3年間に出産した女性従業員の育児休業取得者割合が100%」「女性労働者への役職者への登用」などの取り組みが優れていることから認証されたもので、これにより県の建設工事等入札資格審査で主観点が加算されるなどのメリットも受けることができるようになります。(別掲記事参照)
「父が亡くなって、母が長く当社の社長を務め、その後も専務に女性を起用したりと、能力があれば男女にかかわらず役を担ってもらっています」と藤田氏。
また、入社当時はパートとして現場事務を任されていたという、梶総務課長は、入社後2人目の子どもを出産。同社のさまざまな分野を経て、重機のオペレーター資格も持ち、総務部門の取りまとめ役として重要な役割をはたしています。
「棚倉では女性も働くのが当たり前の風土があります。当社でも、結婚や出産を機に辞める人はいません。昨年から新卒採用を再開しましたが、他社がリストラを進めていた時でも人を減らすことはしなかった。『仕事は人についてくる』との考えがあり、まさに今、当社の仕事は技術者がいるからできるのです」と梶さんは話します。
「県建設優良工事」表彰が21回
1973年から21回、毎年のように「福島県建設優良工事」の土木部門や農林水産部門で表彰されてきた同社ですが、一時は11社にまで分社化して多角化をすすめ、耐震補強工事などの民間土木や住宅建築・販売などの仕事を増やしてきました。
分社してきた会社の立ち上げや経営を手がけてきた藤田氏が、4年前に同社社長に就任してからは、それらの仕事を取り込んで合併・吸収し、藤田建設工業としては公共事業を売上の30%までに減らしてきました。
現在、工業団地として造成されていた白河の土地を住宅90区画分買い取り、住宅展示・販売で、豊かな自然と共存する新たな町づくりにも取り組んでいます。
会社概要
設立 1952年
資本金 9036万円
社員数 164名(うちパート1名)
年商 53億3589万円
業種 総合建設工事など
所在地 福島県東白川郡棚倉町
TEL0247-33-2281
http://www.fujitakk.com/
「中小企業家しんぶん」 2008年 6月 15日号より