「Made in 土佐」にこだわり~(有)高知アイス 社長 浜町文也氏(高知)

農家、建設業との連携で高知アイスを全国へ

 今回は、「ゆずシャーベット」など「Made in 土佐」にこだわった商品づくりで「農商工連携88選」にも選ばれた(有)高知アイス(高知同友会会員)を紹介します。

 高知市より西へ車で一時間、四国三大河川の1つに数えられる清流「仁淀川」が流れるいの町吾北。ここで、ユズ、文旦(ぶんたん)、ぽんかん、小夏などの果実を原料にしたシャーベットをメインに、各種アイスクリームなど食品の製造販売を手掛ける有限会社高知アイス(浜町文也社長、高知同友会会員)。高知県産の厳選した素材しか使わないという同社のこだわりを持った商品は、多くの県外ファンを魅了しています。

 もともと学校を出てからは漁師として船の上で6年間生活していた浜町氏ですが、結婚を機にサラリーマンとして働くことになります。その会社で食品部門を担当、全国の物産展を渡り歩いたのが創業のきっかけとなりました。

四万十川ブームで一念発起

 1993年ころ、「四万十(しまんと)川ブーム」がやってきた時に、四万十川の水や県産の果物を使ったシャーベットを売りたいという強い思いが浜町氏の中に湧(わ)いてきます。

 それまではメーカーから仕入れたアイスを中心に販売していましたが、一念発起し、アイスクリーム製造について勉強するため弟子入り。ついに95年には自社工場を構えます。以来、高知県産の素材にこだわった製造販売で、県外を中心に量販、生協、コンビニへと販路を次々に拡大してきました。

建設業と連携しユズ生産へ

 同社が現在の場所に本社を移転したのは、2004年です。その間、工場を拡張し、首都圏や関西圏の都市部を中心にした県外市場をさらに開拓、売上を急速に伸ばしてきました。あわせて、同社の主力商品である「ゆずシャーベット」の原料であるユズ果汁の使用量も、工場を操業当初、年間約1トン程度だったものが、30トンほどにまで拡大してきます。

 その一方、近年の全国的なユズブームが追い討ちをかける形で、県内業者にはユズがほとんど入らない状況が生まれ、原料調達という新たな課題が頭を悩ますようになりました。

 そこで浜町氏は、同じく吾北に拠点を構える国友商事(株)(国友昭香社長、高知同友会会員)に「ユズの生産を始めないか」と話しを持ちかけます。地元には、生産者が高齢のため管理が厳しく、放置されている畑がたくさんあったからです。

 建設業がメインの国友商事ですが、日本茶の原型である「山茶」の製造販売で異分野進出を既に果たしており、地域に強い愛着とこだわりをもった会社同士ということでも意気投合しました。

 早速、国友商事では遊休畑を管理し、ユズ生産に着手。高知アイスはそこで生産されるユズの全量を仕入れることになります。

現金買い取りでユズ農家と直接取引も

 同時に、あらゆる人脈によるユズ農家との直接取引を拡げる努力が効を奏し、結果的には130軒ほどの県下全域の農家からの仕入れが可能となり、必要量を賄えるようになりました。

 「ユズ農家との直接取引でとても感動的だったのは、ある地区に仕入れに行くと、ユズ果汁を満載した軽トラックが20台くらい並んで、さながらナポレオンの凱旋(がいせん)のように大歓迎で出迎えてくれたことです。現金で買い取る時の農家さんの本当にうれしそうに輝く笑顔が忘れられません。現金収入の少ない生産者にとっての切実な思いが伝わってきました」と、浜町氏は語ります。

高糖度トマトが丸ごと入った土佐ゼリー

 国の2007年度中小企業地域資源活用促進法の認定を受けた事業では、ハギノ建設(株)(萩野裕章社長、高知同友会会員)と連携し、関連の農業法人で生産された規格外トマトを使ったゼリーの開発に着手。試行錯誤の末、高糖度トマトの実が丸ごと1個入った「土佐ゼリー」が5月に完成しました。

 量産のための設備を備えた新工場も竣工(しゅんこう)し、6月10日ころから本格的な製造に入ります。販路に関しては、既に大手コンビ二での個数限定の先行販売が決まっており、6月下旬から販売をスタートすることになっています。

 さまざまな県産素材を生かした商品を手がける高知アイス。現在では、間接的なものも含めると300軒ほどの農家との取引があります。その仕入れた素材に付加価値を付け、県外を中心に販売することで県内の生産者を豊かにできる、そんな会社にしたいという目標を持つ浜町氏。「海外市場ももちろん視野に入っています」と熱く語ります。

会社概要

創業 1988年
資本金 300万円
社員数 30名(内パート10名)
業種 アイスクリームの製造販売
所在地 高知県吾川郡いの町下八川乙683
TEL 088-850-5288
http://www.kochi-ice.com/

「中小企業家しんぶん」 2008年 6月 15日号より