風雲急を告げる中小企業の融資環境

今そこにある「金融危機」

 神奈川同友会が9月に行った金融行政関係者との意見交換会に参加する機会がありました。行政側は中小企業庁金融課と財務省関東財務局。最近成立した中小企業金融3法(中小企業信用保険法改正等)等を解説していただき、意見交換しました。

 中小企業金融3法の目玉の1つは、売掛債権早期現金化です。背景には、手形の利用が1991年から2005年では約8分の1に減少し、中小企業の保有する売掛債権の比率が上昇していることがあります。

 手形は割引による現金化が可能ですが、売掛債権を早期に現金化することは限られており、中小企業の借り入れや資金繰りの負担が大きくなっています。

 ここに着目して、信用保証協会や中小企業金融公庫が保証し、手形割引のような現金化の手段を売掛債権でも実現しようとするのが「売掛債権早期現金化支援」の仕組みです。これが使い勝手の良いものになるなら、中小企業にとって朗報と言えるでしょう。

 しかし、中小企業をめぐる金融環境は急速に悪化しています。本紙9月5日付で紹介されている相川直之氏の報告が述べているように、大手銀行の中小企業向け貸出の選別強化が進んでいます。

 神奈川同友会が8月に調査したアンケートの回答や、意見交換会の参加者の一部からは、金融機関の対応が悪くなり、借りにくくなっているという声も出されました。

 また、信用保証協会の保証付融資でも「貸し渋り」が生じているという発言が、8月27日の中同協常任幹事会で愛知同友会からありました。

 神奈川同友会のアンケートの中でも、「保証協会も…今年の7月以降、掌を返したように厳しくなり、枠(無担保個人保証で8000万円)を超えての保証を受けなくなった。しかし、今まで受けてくれていて、それをある程度あてにしてきて資金繰りを考え、少しでも伸ばそう(実際に売上、利益とも伸びている)と頑張っているのに、急に給油を止められれば、中小企業は成り立たない」という切実な記述が目を引きます。

 この記述回答のように、今年度に入ってから保証付融資に全国的にブレーキがかかり始めているのではなかという疑念が生じます。

 事実、東京信用保証協会の業務概況によれば、今年度4~6月期の累計(前年同期比)で「保証申込」が件数で82・6%、金額で70・7%と低い水準でした。「保証承諾」も件数で81・6%、金額で66・6%にとどまっています。一方、「代位弁済」は件数で122・8%、金額で151・3%に達しました(『保証マンスリー』8月号)。

 このような保証の低迷の原因には不況の深刻化が考えられますが、そのような時こそセーフティネットの役割が信用保証制度に期待されていると言えます。し

かも、昨年10月から導入された責任共有制度が金融機関の「消極化」を招いているとしたら由々しいことです。金融庁は監督指針を改正し、「『責任共有制度』が導入されたことを口実として融資を謝絶するといった不適切な対応を行っていないか」という文言を加え、金融機関への監督を強化しています。

 金融問題は、再び緊張感を持って取り組むべき課題になってきました。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2008年 9月 15日号より