長期不況にいかに立ち向かうか

「先の見えない時代」の羅針盤は足元に

 9月以降、金融危機は実体経済に波及し、世界経済は戦後最大の危機に突入したと言われています。10月の中同協・政策委員会では厳しい景況について発言が相次ぎました。

 「県一番の建設会社が民事再生手続きに入り、12月には県内で倒産が多発する恐れもある」、「ある役員は売上50%ダウンの経営計画を組んだと言っていた」など、深刻な状況が報告され、それを受けて大橋正義・中同協政策委員長は、「今の世界的な信用収縮に対して、トヨタなど日本の大企業のリスクマネジメントの反応がものすごい勢いで進み、崖から落ちるような不況局面にあります。これは、短期的に止まる見通しがなく、3年先まで縮小・低迷が続くと言う人もいます…特に、仕事の減少に対して、需要の拡大と創造の戦略が求められています」と強調しました。

 輸出に依存し、その中核である自動車などの後退も明確になった日本経済は、内外需とも総崩れの状態にあります。戦後の景気後退局面の「長さ」の平均は17カ月。最長が第2次石油ショック時の36カ月です。今回の景気後退の「長さ」は、平均的なものにとどまるという「楽観的シナリオ」もありますが、米国発の経済危機という衝撃を甘く見ることはできず、落ち込みの深い長期不況となるリスクは否定できません。

 それでは、不況長期化を覚悟し、いかに対応するのか。同友会景況調査報告(DOR)第84号(概要は本紙11月5日付)では、「経営上の力点」の記述回答に書かれた会員企業の経営戦略・戦術を6つの方策に整理しました(詳しくは、https://www.doyu.jp/research/dor/2008/dor_84.pdf)。

(1)自己資本の充実で「不況持久力」をつける。
(2)良い仕入先、良い販売先、良い金融機関との取引へ。
(3)価格転嫁とコスト削減の工夫と努力。
(4)社員の雇用を守るための付加価値創造と商品細部の造り込み。
(5)新しい力を引き出し、人間力を高める。
(6)自分の仕事は自分で創り出す。

 さらにDORでは、「経済の専門家も予測できない『先の見えない時代』になった。しかし、経営者は『うろたえる』ことは許されない。…今こそ、社員と現状認識を共有し、『何のために経営するのか』という経営の原点に立ち返り、『危機の時代』を乗り越えていく武器となる経営指針・ビジョンを具体化することが求められている」と結論づけています。

 「解」は足元にあります。同友会の日常の例会等の中に、「危機の時代」を乗り越える生きた知恵やヒントがあるのです。私たちは、現状の厳しさをリアルに認識しながら、同友会での真剣な学び合いと、励まし合い、協力し合う取り組みを強めていくことが求められます。

 そして、同友会を地域で大きく強くすることが不況の嵐に耐えて地域を支える中小企業を数多く輩出し、地域経済の安定した基盤をいち早く形成することにつながるでしょう。このような不況との闘いと地道な努力の中から、日本での中小企業憲章が展望できるようになると考えます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2008年 11月 15日号より