同友会の全国ネットワーク生かす交流を~中同協情報化推進本部委員 神戸電子パーツ(株)社長 松島俊哉(兵庫)

e.doyu上でSNS広域試験運用始まる~信頼できる情報の共有で復興へ―阪神・淡路大震災の教訓から

 昨年12月、中同協では組織活動支援システム「e.doyu」上でのSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の広域試験運用を開始しました。福岡同友会広報情報化交流会で反響の大きかった松島俊哉・中同協情報化推進本部委員の報告をもとに、SNS活用までの兵庫同友会の取り組みについて松島氏に寄稿いただきました。(編集部)

阪神・淡路大震災とインターネット

 1995年1月17日午前5時46分、阪神・淡路大震災が発生しました。

 被災した街の状況を刻々と記録し、配信し続けたのは実験中の神戸市ホームページや44名 の学生を失った神戸大学の安否情報の発信などでした。

 これらをもとに海外メディアでも大々的に報道され、この震災で「インターネット」の果たした役割が大きくクローズアップされ、私たちの知るところとなりました。

復興時の初期判断は同友会情報が頼り

 インターネットが情報の即時性とその情報の共有に力を発揮した反面、安否情報や被災状況の共有の有無がその後の個人的な復興に大きく影響しました。

 また、企業においては経営支援情報の収集とその共有が、その後の復興に大きく影響したといえます。

 当時の最高5000万円までの緊急特別融資について、同友会から積極的に情報が発信され、経営指針書を「復興計画書」に書き換え、金融機関に事業意欲を伝えることで迅速な資金手当てができることなどを口コミで伝えたことで、会員企業が正しい初期判断をすることができました。

インターネットの光と影

 その後、企業はもとより、行政や団体さらには個人のインターネット利用が劇的に増加。インフラ網の強化と低価格化が進み、携帯電話による利用促進が拍車をかけ、日本は世界でも有数の個人のインターネットへの接続数となり、商用利用も進んできました。

 しかしながら、社会面では自殺サイトや学校裏サイトなどでの陰湿ないじめなどが露呈しました。また、商用でも詐欺まがいの販売行為や信ぴょう性のない情報の流布などが問題となっています。

 そこには匿名による利用ができるという特殊な環境や、個人的商行為でのコンプライアンス違反が問題となっています。

同友会での情報共有の大切さ

 さて、同友会では、会員に向けた情報の提供や経営の実態把握、さらに地域における中小企業の業況などを情報共有していくことは、会員の経営実践に役立つとともに、同友会の組織運営においても重要なヒントを与えてくれます。

 しかし、紙媒体での情報提供は、即時性の面から不利であったり、情報収集には費用がかさむことは否めません。

 このようなことから、組織活動を推進する手段としてのIT(情報技術)活用と、情報発信や収集の手段としてのインターネット利用は、紙媒体との役割の違いを認識した上で、欠かせないものになったといえるでしょう。

e.doyu利用の意義

 2005年9月より中同協が提供をはじめた「組織活動支援システムe.doyu」は、各同友会の組織運営において大きな役割を担ってきました。

 現在、e.doyuを利用する同友会は42、発行ID数 は2万3000にのぼり、各同友会における情報共有の手段として着実に普及したといえます。

 e.doyuは、会員の組織属性に応じた情報提供の仕組みや例会等の出欠管理、アンケートでの情報収集の仕組みなどを持ち、組織運営における定型業務のIT化で、業務効率が上がるとともに、FAX代や独自開発のコスト削減にも大きく貢献してきました。

 同友会には経営体験交流とグループ討論を基本とする活動によって、さまざまな経営の知恵が蓄積・集積されています。

 それは同友会が、「3つの目的」はじめ共通の理念の実現に向けて、共に学び・共に育つという信頼関係を基盤とした集団であるからこそ、可能と言えます。

 会員間の信頼関係をより強固なものにし、この厳しい時代を乗り切るためにもお互いの強みを生かしたネットワークを構築し、仕事も一緒にできる関係を作っていきたいものです。

同友会の枠を超えた交流を「SNS」で

 e.doyuは、これまで同友会の定型業務の効率化と組織の持つ情報の共有という組織面からの活動支援としての役割を果たしてきましたが、会員が持つ固有の情報の共有や会員間のつながりを促すものではありませんでした。

 そこで、中同協では各同友会の枠を越えて会員間交流が可能な仕組みへと発展・成熟させるために、来年度よりe.doyuの新しい機能として、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の仕組みを提供することとなりました。

 このSNSでは、会員が実名で参加し、経営課題や興味などを同じくする会員が集う「コミュニティー」を自由に作り、管理運営できるとともに、既存のコミュニ ティーにも参加し、全国の会員との交流の場を持つことができます。

 2008年2月より兵庫同友会単独で試験運用を開始し、現在、大阪、石川、沖縄などが広域試験運用に順次参加しています。

 会員間の新たなネットワークづくりに向けて、全国のe.doyuでSNSの利用が開始されることが期待されています。

「中小企業家しんぶん」 2009年 1月 5日号より