人も地球も幸せになれる楽しい会社に マツシロ(株) 社長 松城 幹夫氏(大阪)

商品としての紙袋で環境にこだわり続けて半世紀

 厳しい経済環境の中、「緑の内需」で地球も経済も再生させる動きが始まっています。本連載では、環境経営で企業革新をはかる会員企業の取り組みを紹介します。1回目は、大阪同友会「2008年DoYuEco」で代表理事賞受賞のマツシロ(株)です。

商品としての紙袋を初めて売り出す

スーパーのレジかご

 いまや全国どこにでも見かけるコンビニエンスストア。その第1号店出店時から、「ビニールをかぶせた紙袋」がコンビニの基本商材となっていることはご存知でしょうか。

 東大阪に本拠を置くマツシロ(株)は、それまで商品の購入者に対するサービス品でしかなかった紙袋にビニール袋をかぶせることで、日本で初めて商品としての紙袋を世に出した会社です。日本が高度経済成長へと駆け上っている1960年ころ。紙袋といえば、すぐ破ける、だから使い捨てにされるのが相場。そこにビニールをかぶせ、耐久性をもたせれば、商品になるのではないか。先代の創業社長が発案しました。

 当時、まだレジ袋がなく、買い物かごや風呂敷をもって買い物に行っていたスーパーなどで売られるようになりました。売り場は、決まって階段の踊り場や店の出入り口付近。やがて消防法や美観の関係で売り場が縮小されてきたころ、たまたま直納していたイトーヨーカ堂がセブン・イレブンの1号店を出すことになり、同社の紙袋が基本商材の1つに採用されます。その後、次々と出店されるコンビニの定番となっていきました。いまでも、コンビニでのシェアは7~8割あるといいます。

塩ビ規制がきっかけ

 同社が環境問題をはっきりと意識するようになったのは、欧米に輸出していた15年ほど前。燃やすとダイオキシンを発生させるからと、ヨーロッパで塩化ビニールの包装資材の使用が禁止されたことを知ります。

 紙袋にかけるビニールは、他社ではポリプロピレン製でしたが、同社では「柔らかくて丈夫」との理由で、塩ビを使っていました。同社の紙袋は商品そのものであり、包装資材ではないので大丈夫だろうということでしたが、やはり最終的には燃やすことになるため、ポリプロピレン製に変更することにしました。しかし、そのままではパリパリと堅く、破れやすいため、これまでの塩ビ同様、柔らかくて丈夫なものとなるよう、ポリプロピレンの配合を調整。袋の底には、「燃やしても安全」との表示をつけました。

 以前から、紙袋が最終的にはゴミになってしまうことが気になっていた松城社長。このことをきっかけに、はっきりと環境を意識した商品づくりへと軸足を定めていきます。

「環境」キーワードに商品開発

 10年ほど前のある日、たまたまテレビで1人の主婦が、「レジかごに直接セットできる買い物袋があれば」と話しているのをきき、商品化したのが布製の「エコ楽バッグ」です。

 すぐに5万枚製造しましたが、はじめの1年で売れたのはわずか5000枚。大量の在庫を抱えながら、生協のカタログに掲載されたり、スーパーの新規開店祝いに使われるなどで、5年ほど前から少しずつ売れはじめ、昨年はレジ袋有料化が本格化するなかで、一気に火がつきました。現在は生産が追いつかないほどとか。

 紙袋も「環境」をキーワードに進化を遂げていきました。取っ手を取り付ける留め具を金属からプラスチックに変えるとともに、廃棄時に紙とそれ以外のものに分別できるよう改良。素材の紙も、品質やデザイン上のこだわりから、同社専用の紙を製紙メーカーに漉いてもらっていますが、それぞれの紙袋にあわせて無駄のないとりかたができるような工夫もしています。

 5~6年前から再生紙100%の紙に変更し、その旨の表示もしました。3年前には、メーカーから100%再生紙であるとの証明書ももらいました。ところが、昨年初め、製紙メーカーによる再生紙偽装問題が発覚。改めて問い合わせたところ、古紙は安定供給されないので、時によって30%だったり70%だったりしているとの答え。

 同社では、すぐに納入先にこのことを伝えるとともに、商品に訂正シールを貼ってまわることで、何とか了解を取り付けることができました。しかし、あるプライベート商品では、全品引き取り、すべて廃棄処分となったところもありました。今も、古紙安定供給のめどが立つまでは、再生紙100%の表示は一切しないことにしています。

エコアクション21で社員のベクトルあわせ

 「環境を商品に落とし込んで商売しているからには、会社としてのバックボーンが必要」と考え、まずISO14001の取得を検討。しかし、コストも手間もかかることから躊躇(ちゅうちょ)していたとき、大阪同友会で「エコアクション21」のスクールが始まることを知りました。2005年10月から半年間、第1期生として担当社員とともにスクールに通い、2006年9月、認証取得することができました。

 まず朝礼で、「未来の地球と私たちの子孫のために、いい環境を残していこう」と話し、エコアクション21に取り組むことを宣言。担当者を決め、目標を立て、毎月はじめの朝礼で先月の結果を発表するなどPDCAを回し、全社一丸となって取り組みました。

 電力では、クールビズ・ウォームビズの徹底のほか、定時退社日を月2回設定。廃棄物の削減では、製造ミスの削減と、端紙を社内で使うコピー用紙に転用するなどを徹底。エコドライブや低燃費車の導入などガソリンの削減にも取り組みました。

 その結果、1年間で、電気は2万3000キロワット(一般家庭6世帯1年分の使用量に該当)、ゴミは4トン、ガソリンは340リットル削減でき、CO2排出量では20トンも削減することができました。

 製造過程の見直しで不良率が低下するなど、エコの取り組みが経費節減にも直結し、やればやっただけのことはある、と実感。社員にとっても大きな自信となりました。さらに、それまで廃棄処分にしていた残生地を使ったエコバッグが生まれるなど、新たな商品開発にもつながりました。

 エコアクション21に取り組む中で、「環境を意識し地域社会に信頼され、社会に貢献する会社をめざします」(経営方針)に向かって、社員のベクトルがしっかりとあってきました。

会社にかかわる人すべてが幸せに

 「elite(エリート)」というブランドで、環境を意識しながら、高品質でデザイン性ある紙袋を市場に提案し続けるマツシロ(株)。ファッションバッグや雑貨小物も手がけ、2005年には神戸・岡本にアンテナショップをオープン。女性スタッフを中心に、地域密着の店舗展開をしています。

 「これからは、ブランドイメージを最大限発揮することで『歩く広告塔』ともいわれる手提げ袋のOEM受注にも力を入れていきたい」という松城氏。「会社にかかわるすべての人に幸せな人生を送ってもらいたい。そのためにも、地球環境に貢献し、やりがいがあり、楽しい会社にしていきたい」と話します。

会社概要

創業 1949年
設立 1959年
資本金 4860万円
社員数 46名
業種 紙袋、袋物、雑貨小物の製造・企画・販売
所在地 大阪府東大阪市角田
TEL 072-962-1431
http://www.m-elitebag.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2009年 2月 15日号より