感動を共有できる会社をめざして　報告者：（株）シケン　社長　島　隆寛氏（徳島）

歯科技工物製造で全国展開

　入れ歯や差し歯など歯科技工物製造では業界トップクラスの売上を誇る（株）シケン（島隆寛社長、徳島同友会会員）。2004年に同友会入会以来、「経営指針を創る会」に参加するなど、同友会で学びながら、社員や歯科医院とも感動を共有できる企業をめざしています。女性社員も多く、仕事と家庭の両立支援にも取り組んでいます。昨年10月に行われた徳島西支部例会での島社長の報告より紹介します。

全国2800軒の歯科医院と取引

社内風景

　（株）シケンは、2008年に30期節目の年を迎えました。1975年に「歯科技工が産業にならないか?」と考え、両親が創業しました。79年に法人化し、現在、全国6カ所の技工所と400名を越える社員で、差し歯や入れ歯の製造を行っています。

　歯科技工士は従来、午前中に自分で歯科医院を回り、昼から技工作業をするのが一般的です。多くは営業マンを持たず、1人で経営しています。しかし、当社は業務を分業し、営業マンを抱えたことで高松、岡山、大阪、東京へと全国展開していきました。

　現在、売上は日本の歯科技工業界で3番目、雇用している歯科技工士数は全国で2番目です。取引をしている歯科医院数は2800軒あり、売上から計算すると、日本人の100人に1人は当社の入れ歯や差し歯をしている計算になります。またセラミックの差し歯は、徳島では初期の頃から携わっており、非常に評判が良かったです。

会社は誰のもの？―指針を創る会に参加して

　先代は「社長30年説」を持っており、私にも若いときから社長を経験させた方が良いとの考えで、新規事業の撤退と同時に、2002年に社長交代しました。当初は、古くからの社員さんとの間でやりにくい面もありましたが、幹部社員の気遣いでスムーズに事業継承が進んだと思います。

　同友会には、2004年に入会しました。すぐに「経営指針を創（つく）る会」に参加し、経営指針を成文化しました。自分とほぼ同年の方が多かったことが刺激になり、大変勉強になりました。

　指針の中に「売上日本一」と入れたのですが、会員の（株）高橋ふとん店の高橋社長から、「一番になると、どうなるのか？」と指摘され、頭を打たれた感じがしました。この時、会社をどうしていくべきなのか、仕事の意義について、自分でもっと掘り下げて考えなければならないと思ったと同時に、同友会の「共に育つ」という哲学に共鳴しました。中小企業のほとんどがオーナー企業だと思いますが、「会社は誰のものなのか」を考えなければならないのです。

　創る会では、先輩会員から「どうして指針が必要なのか、意義を社長が十分に理解し、社員に説明できなければ浸透しないよ」と言われたことが、今でも強く心に残っています。

社員が誇りを持てる会社に―全国4カ所で理念研修

　経営理念を社内に浸透させるため、2007年から年2回、全社員を対象にした「経営理念研修」を開催しています。会社の方針を話し、部門長の話や経営理念のキーワードである「顧客満足、顧客は誰？」など、毎回テーマを決めて話し合っています。

　2008年は、「社員が誇りを持てる会社」について話し合い、試行錯誤の中で顧客方針と商品方針ができました。

　「顧客満足は何か？」を東京、大阪、徳島、高松の4カ所に分かれて話し合い、意見を出しあいました。

　現在、歯科技工士は減っていますが、歯科医師は増えています。そのような中で、自費治療に力を入れる医院も増えてきました。今後は、先生方にも経営指針を作ることをすすめていきたいと考えています。

歯科医院とも、共に育つパートナーに

社屋外観

　社員さんと感情、感動を共有できるような体制をとっていきたいと考えています。営業マンは、歯科医院で叱られ、落ち込むこともありますが、今後は歯科医院からのお褒（ほ）めの言葉も、社内でフィードバックできるシステムを作っていきたいと思います。医院の先生にも、共に育つパートナーとなってもらいたいとの思いがあるからです。

　商品方針では、営業・事務方・製作スタッフが一丸にならないと、シケンブランドはできないと感じています。今後は、理念と方針を決め、実践に移していくため、歯科医師向けの経営改革セミナーを開催し、コミュニケーションを図る機会としていきます。

　これからも経営指針と経営理念を拠り所に、共に成長できる社員をパートナーとして、頑張っていきたいと思います。