わが社の定期健康診断―企業変革支援プログラム ステップ1 その13

[3] 人を生かす経営の実践 (3)労働環境の整備

 「うちの社員は、自発的によく残業してくれる」「働きがいは給料の問題じゃない」と、経営者の方から話を聞くことがあります。

 1975年に発表された「中小企業における労使関係の見解」(「労使見解」)は、激しい労使紛争を経て、経営者として全社一丸の経営をするためには何が必要なのかを問いかけあい、13年の年月をかけて起草されました。その第2章「対等な労使関係」では、「なによりも実際の仕事を遂行する労働者の生活を保障するとともに、高い志気のもとに、労働者の自発性が発揮される状態を企業内に確立する努力が決定的に重要」と強調しています。

 「ステップ1」の本項では、先の定義をもとに、経営者が社員の生活実態をつかみ、快適な職場環境づくりのための取り組みを行っているか、法令にのっとって就業規則や賃金規定、労働時間の見直しなど労働環境の整備を行い、仕事と生活のバランスをはかる必要性を問うています。

 この「法令」とは、労働法全般のことで、代表的なものに、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法、男女雇用機会均等法、最低賃金法、労働者派遣法、育児・介護休業法などがあります。これらの法の根本には、日本国憲法が定める基本的人権や生存権の保障などがあります。これらの法を守れない企業は内部告発などによって社会的に厳しい評価を受けています。

 平準化された成熟度のレベル「3」は、法令にのっとった、快適な職場環境づくりのための取り組みや仕事と生活のバランスを図るための就業規則や諸規定などを整備し、実行されている状態を指しています。

 めざすレベル「5」は、「社員一人ひとりの仕事と生活の調和が図られ、対外的にも評価されている」状態です。

 中小企業だから、なにも言わなくても社員は分かってくれているという期待や甘えは捨て、社員の意向も取り入れながら、社内の労働環境を見直していきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2009年 12月 15日号より