若い力で地域の未来を切り拓こう~各地の合同入社式・新入社員研修会から

失敗を恐れずやりたいことにチャレンジを【岐阜】

相手が喜んでくれたことに価値

 岐阜同友会では桜が満開に近づいた4月1日、合同入社式を開催。23社47名の新入社員を、みんなであたたかく迎え入れました。

 記念講演講師は、元「パチプロ」という異色の経歴を持つ五十嵐英昭氏。かつて月収平均100万円をパチンコで稼いでいたそうですが、勝てば勝つほど店からも、周りのお客からも妬まれる生活に嫌気がさし、1年ほどで単身海外へ脱出。そこでアルバイト、ボランティアをした経験から、五十嵐氏は「海外で頂いたお金は、小額でも相手が喜んでくれた代価。パチンコで稼いだお金よりもはるかに価値があると気づいた」と話しました。

 また、自身の体験を通じ、「できる、できない」で選択をするのではなく、「やるか、やらないか」で判断をし、失敗を恐れずやりたいことにチャレンジしてほしいと新入社員にエールをおくりました。

先輩社員が会社の垣根を越えて教えあう

 引き続き、午後から1泊研修会が行われ、20社37名の参加者が、12の講座から社会人としての基本的な姿勢を学びました。

 岐阜同友会では、この研修の中に「先輩社員が教える立場になる場」を積極的に設けています。特にマナー研修は同友会会員企業の先輩社員が講師を務めます。事前に養成講座を開催し、まずは先輩社員がマナーの基礎を習得。それを小グループに分かれた新入社員に講師となって教えます。

 教える先輩の一生懸命さと学ぶ新入社員の真剣さ。会社の垣根を越え、先輩と後輩が互いに学びあう同友会ならではの研修として定着しています。

新入社員を地域の宝として育てよう【福島】

入社式福島

 福島同友会では、3月23日から26日にかけて郡山・福島・会津・相双・いわきの県内5会場で合同入社式と新入社員研修会を行いました。

 28回目を迎えたこの行事ですが、同友会の地区組織が増えるとともに開催会場が増え、5年前から現在のような5会場での開催となっています。厳しい経済状況も反映して、中には参加の新入社員が10人に満たない会場もありましたが、「地域の新入社員を地域の仲間で祝福し育てよう」という意識のもとで、それぞれの会場で手づくりの式典と研修を実施しました。

 このうち郡山会場では、大川原順一郡山地区会長をはじめ、来賓として迎えた原正夫郡山市長(代理)、藤原勝栄郡山公共職業安定所所長、丹治一郎郡山商工会議所会頭の各氏から、地域の企業の一員として社会人の第一歩を踏み出した新入社員の皆さんにエールが贈られました。

 続いて、来賓の高校6校の先生からひと言ずつ激励の言葉がありました。その後、先輩社員からの激励の言葉、新入社員を代表しての決意表明と続き、温かみのあふれる式典は終了しました。

 式典終了後は、会場を移して新入社員研修を行いました。「中小企業で働く意義・やりがい」などのテーマでの基調講演、グループ討論を行い、最後に参加者がそれぞれに明日からの目標をまとめました。

マスコミも注目

 昨年比マイナ0・4%とはいえ、会員企業の9・5%、125社であわせて408人(2010年2月調べ、回答率82・6%)をこの春に新卒採用しているという数字からも、同友会の会員企業が担っている役割は小さくありません。

 当日は、地元テレビ各局からも取材を受け、夕方の県内ニュースで放映されるなど、合同入社式と新入社員研修会は、同友会らしい春の風物詩として認知されてきています。

同期入社としての仲間意識も【福岡】

入社式福岡

 福岡同友会では毎年4月1日に恒例の合同入社式が開催されます。例年、マスコミからの取材も多くあり、当日の夕方にはテレビのニュース番組でも取り上げられます。1979年から31年続く合同入社式も、今では春の風物詩と言われるほどになりました。

 中小企業に入社する社員数は決して多くはありません。そのためか、横のつながりがあまりできず、相談する相手があまりいないことが多いようです。合同入社式のねらいは、参加することで同期入社としての仲間意識も生まれ、安心感や仕事に対する意欲につなげるというところにあります。また、これからの人生の指針になるような記念講演や祝辞を通して、社会人として働くという意識付けをしています。

新入社員が「社会人宣言」

 今年の入社式にも、地元企業の将来を担う新入社員の皆さんが緊張した面持ちで参加しました。「先輩社員の言葉」に真摯(しんし)に聞き入り、記念講演講師・末石蔵八氏((株)キシヤ・代表取締役社長・福岡同友会会員)の「真心を知識に包んで仕事に生かす」や「素直と成長は比例する」など多くの言葉に学びを得、社会人としての第一歩を踏み出しました。

 また、代表3名の新入社員が述べた「社会人宣言」は、さわやかさと意欲に満ちあふれ、自らが社会で活躍するんだという意気込みの強さが感じられました。

 今年の合同入社式の参加は25社・48名でした。2009年は35社・77名、2008年は34社・81名と、参加者数の減少は近年の経済状況を反映しているとも言えます。経済の低迷で採用を控える企業も少なくはありません。しかし、定期採用で人材を確保し、経営者と社員が共に育つことが会社全体の良い社風を創(つく)り上げ、「労使見解」実践の基礎となるのです。

【経営者からの期待】切り拓け、君の未来を!

(株)イベントスコミュニケーションズ代表取締役 川中英章氏(広島)

「目的は金儲け」で失敗

 今日は新入社員として社会人の第一歩、まことにおめでとうございます。

 私は大学卒業後、地元の大学スタッフとして就職しますが、仕事にやりがいを見出せず退職します。その後、イベント企画会社を設立。ちょうどバブルの絶頂期で巨大お見合いパーティー、出張パーティー、町内の運動会、と人が集まることは何でもしました。しかし、全く儲かりません。その後、飲食部門も手がけるようになり、自分のブランド化のためにソムリエの資格も取得します。そしてワインブームがやってきます。 順調にいくかなと思った矢先にバブルが崩壊。とにかくお金を儲けることが目的でしたから、何をやってもうまくいきません。採用したスタッフも1人また1人と辞めていきます。社員一人ひとりの良さとか、技術とかは一切認めない仕事のやり方をしていました。その上、うまくいかないとあいつが悪い、こいつが悪い、果てはお客様が悪いと、全てを周りのせいにしていました。

私を変えた一言

 そんな時、尊敬していた社長の一言が私を変えてくれます。「君の周りにはハエが集まっているのだね! それは、君がウンコだからだよ」と。

 大きなことではなく自分の足元を見つめ直すと、食の安全・安心、農業の活性化というキーワードが浮かんできました。自社の得意なイベント、食、ワインのスペシャリスト、これらを生かして、何かできないかなと漠然と考えるようになります。

 そんな時、ある日の朝刊に「広島市農村活性化サポーター募集」という広告を見つけます。これだ! と早速応募。面談で思いの丈を語り、採用されます。そして、「農事組合法人よしやま」での研修が始まります。

周りに感謝される人生を

 ここで原尻組合長(78歳)との出会いが私の人生観を大きく変えてくれました。「10年たった先、この地域が滅びることなく元気な状態で、なんか明るくなってきたなという時代が築けたらいいと思ってるんよ。自分が生きとったから、この地域が、この集団が、家族が、こんなことになったんだ、と感謝される人生だったら、素晴らしい死に方だと思いませんか」と原尻さんは話されました。

 原尻さんは、あぜみちの草抜きばかり、農業のことは何も教えてくれませんでした。暑い日も、雨の日も、雪の日もずっと組合のあるところから集会場まで草抜きです。原尻さんを見ながら、当たり前の何でもないことを毎日できる。この人は本当に立派な人だなと感じました。

夢のある人生を

 現在の私の夢は、第6次産業(食のエンターテイメント業)として儲かる農業の援助をすること、そして、その仕組みを活用して自社を元気で誇りの持てる会社にすることです。地域の人が作った野菜をワクワクさせるキーワードを創る、付加価値をつけてディスカウントされないようにできないかと考えています。

 また、農業を応援する農業サポーター制度、農村に集まった人たちに、いろんなお祭りを提供、月に1回ふれあい農業教室、65歳になったら採用する新入社員制度・・・と夢は広がっています。

 新入社員の皆さん、人生は1回限りの片道切符。人間にとって一番悲しいことは夢が叶わないことではありません。夢が持てないことです。夢を持って、すばらしい人生を歩んでいってもらいたい。頑張ってください。

【先輩社員の激励】常に相談することが大切

沖縄コンピュータ販売(株) 榊原悟志氏(沖縄)

 新入社員の頃、特に思い出に残っているうれしかったことは、営業の目標が達成できたことです。また、辛い思い出は、大きな案件で、見積もりの金額を間違えて顧客に提出してしまい、先輩に励まされ、助けられて乗り越えました。1人で仕事を進めるのではなく、常に相談することの大切さを痛感しました。

 仕事には失敗がつきもので、いつでも楽しく前向きな姿勢でいて欲しいと思います。自分に立ちはだかっている壁を、先輩は乗り越えてきたのだから、何かあったらぜひ先輩に相談して下さい。

【先輩社員の激励】「課題」は成長し続けている証拠

(株)丸忠 久高 樹氏(沖縄)

 入社時から続けている業務日報には、迷いを感じたこと、元気をもらったこと、すべて書き留めていて、振り返ってみると、日々成長でした。自分に後輩ができた時に、初めて注意することの大変さを知り、愛情がないとできないのだと気づきました。

 常にさまざまな課題があるのは成長し続けている証拠で、乗り越えるためには、上司や多くの仲間を信頼することが大事。そして人生をどう生きるかを自分で考えて、夢をもって仕事をしてほしいと思います。

【新入社員の決意】生まれ育った地域に貢献したい

(株)アート不動産 岩島 理恵氏(岩手)

 本日、入社式という、人生のスタートを迎え、この場に立てることへの喜びと、いよいよ社会人としての第一歩を踏み出したという、大きな希望であふれています。

 私は、就職活動を始めた当初、関東での就職を考えていました。しかし、活動を進めるにつれて、やはり生まれ育った盛岡の地で働きたいという気持ちが強くなりました。

 今は、強く希望していた盛岡での就職をかなえることができ、大変うれしく思うとともに、一生懸命頑張りたいという思いです。

 私たちは、今はまだ社会人として未熟でありますが、自ら積極的に学び、感謝の気持ちを大切にしながら、地域に貢献し、地域の皆様に信頼される一人前の社会人となれるよう、先輩方を目標に日々努力を重ねてまいります。

「中小企業家しんぶん」 2010年 4月 15日号より