市場メカニズム通してCO2削減めざす仕組み

新連載【中小企業のCO2削減努力を活かす!―国内クレジット制度活用のすすめ】(1)

 「国内クレジット制度」が、京都議定書の第1約束期間に合わせ、2012年度末(2013年3月末)までの時限的な制度として2008年10月に正式にスタートして2年経過しました。

 この制度は、日本政府の京都議定書目標達成計画の一環として、経団連などの自主環境行動計画に参加している大企業等が、中小企業などのCO2排出削減プロジェクトを支援し、削減できたCO2量をクレジットとして買い取って、大企業等の自主環境行動計画の目標達成に充当するものです。

 国内排出量取引制度の導入をめぐって日本では論争が続いていますが、好むと好まざるとにかかわらず、国内排出量取引制度が整備され、国内クレジット市場が形成されていくことは間違いない趨勢です。

 日本でも、2005年4月から環境省が実験的に自主参加型排出量取引制度を導入しており、小規模ながら、実際のカーボンクレジットの取引が行われています。この国内クレジット制度も、自主参加型の制度ではありますが、環境省の実験とは異なり、正式に閣議決定された、政府全体の取り組みです。

 国内クレジット制度は、まだ不完全な仕組みではありますが、このメカニズムが定着し機能し始めることによって、

 (1)京都クレジット購入で日本の資金が海外に流出するのを食い止め、国内で資金と技術を循環させ、国内経済の活性化と地域振興に寄与する。
 (2)「エネルギーの無駄どり」ともいえる省エネ活動を推進することにより企業のコスト競争力が強化されるとともに、省エネに努力した企業にのみクレジットが発行される仕組みのため、企業の自助努力が報われる。
 (3)すぐれた省エネ技術を持つ中小企業が、大手企業と対等の立場で協働プロジェクトを組成することができる。
などの効果が期待されます。

 筆者は、中小企業の省エネ支援活動を行ってきた立場で、国内クレジット制度設計のための検討会に委員として参画してきました。その後も、経産省の委託で、この制度の普及啓発のための支援事業に取り組んでいますが、この制度の意義が中小企業に十分に理解されているとは言えないのが現状です。

 この6回の連載を通じて、具体的な制度の仕組みや活用方法、活用事例を順次、解説していきますので、中小企業家同友会会員のみなさまがこの制度の趣旨を理解され、活用して省エネ推進に役立てていただきたいと思います。ぜひ継続してお読みください。

 向井征二/(株)日本環境取引機構代表取締役(愛知)(元・経済産業省「中小企業等CO2排出削減検討会」委員)

「中小企業家しんぶん」 2010年 9月 5日号より