経営理念「常に考える」で環境経営を推進~未来工業(株)熊本事業所 工場長 菅原 時男氏(熊本)

【環境経営で企業革新を―「同友会エコ」受賞企業の取り組み】(1)

昨年の全国総会でキックオフした中同協「同友エコ」。環境経営で企業革新をめざす191社から応募があり、7月の全国総会で表彰式が行われました。今回から受賞企業の取り組みを連載で紹介します。1回目は、会長賞を受賞した未来工業(株)熊本事業所(菅原時男工場長、熊本同友会会員)の登場です。同社は、生産工程を見直す中で、エネルギー使用における効率化を図った結果、1年間で593トンものCO2削減に成功しました。エコアクション21の認証を取得しています。詳細は年度内に発行予定の先進事例集をお読みください。(編集部)

「常に考える」企業として

菅原工場長

1965年、岐阜県大垣市にて電気設備資材・給排水設備及びガス設備機材の製造を目的として創業した未来工業(株)の4番目の工場として1989年ニ熊本県菊池市で熊本工場が操業を開始しました。

 「常に考える」を経営理念として掲げる同社では、社員が積極的にアイデアを出しており、独自の工夫を取り入れた商品が目立ちます。なかでも工事用の配線器具「ジョイントボックス」や50もの特許を持つ「スライドボックス」は、現場の声を聞き、顧客の立場で考え改良した商品の代表作です。他社の商品と差別化を図ることにより、付加価値を生み出し、価格決定権を持つという同社の強みへと繋がっています。

EA21がきっかけ

 未来工業(株)熊本事業所が環境への取り組みを始めるきっかけとなったのは、環境省のパイロット事業としてスタートしたエコアクション21(EA21)取得の呼びかけでした。

 エコアクション21とは、事業者の環境への取り組みについて環境省が策定したガイドラインに基づき、取り組みを行う事業者を審査し登録をする制度で、国際標準化機構のISO14001を参考にした中小企業でも取り組みやすい環境経営システムです。

 熊本事業所でも2006年にエコアクション21の取り組みを開始し、認定を取得しました。

 当時を振り返り、工場長の菅原氏は「エコアクション21に取り組み始めた頃は、環境経営に対して漠然としており、どのように環境への配慮をしてよいのかわからなかった」といいます。まずは、社員への環境に対しての教育、啓発活動とコスト削減意識を高めていくことをめざした取り組みから始めました。

「自分達の職場を良くしよう活動」の一環として

工場内

 当初、社員から「なんでこんなことに取り組まなければいけないのか」との声もありましたが、環境問題について話をしながら理解を得ていくことで、「自分たちでやれることは自らやろう」との考えが芽生えはじめます。社員の手作り勉強会がはじまり、社員一人ひとりが環境に意識して仕事を行うようになりました。

 そして、熊本事業所が最も活発に行っている職場の問題解決を目的としたQC活動「自分達の職場を良くしよう活動」でも、環境をテーマにした取り組みが多くなり、大きな成果を生んでいます。なかでも、製造工程のボイラーの灯油使用量削減活動では、50%もの削減を達成し、4年間で約700万円の経費削減につながっています。

 また、菅原氏が3年間実行委員長を務めた「熊本同友会同友の森づくり運動」に多くの社員が参加することで、熊本の自然を守り育てていくことの大切さを学んでいます。

CO2削減の取り組み

 環境活動の大きな成果としては、廃棄物等の総排出量と電力使用量の削減が挙げられます。

 廃棄物排出量の削減では「本当に捨てないといけないものとは何か」を明確にするため、廃棄物の分別をさらに細分化し、マニュアル化しました。また、3R化(Reduce・Reuse・Recycle)に取り組み、有価物化を図りました。その結果、廃棄物等の総排出量が2004年の111・6トンから2009年には28・9トンまで削減、埋立処分量も、2004年の82・6トンから2009年には15・6トンまで削減しました。

 生産活動の大半を占める電力使用量の削減では、事務所に使用量がわかるメーターを設置し、電気使用状況の把握と管理ができるようにしています。電気消費量の2割を占めるコンプレッサーの運転時間を短縮するため、各機の圧力設定を変更。当初6台フル稼働でも足りないと考えていたものが、使い方の工夫で半数まで減らすことができ、5カ月間の運転時間も前年比36%削減と大きな成果をあげることができました。

常に未来へ向けて

 今後の環境経営について「工場でCO2を削減できる範囲には限界があります。だからこそ、社員の家庭での生活や通勤手段など、あらゆる場面で削減方法を考え、地域にその活動範囲を広げていくことが重要となってきます」と菅原工場長。現在、温室効果ガスの具体的な排出削減を目的とした『熊本県エコプロジェクト』にも参加し、熊本県の環境保全活動にも熱心に取り組んでいます。

 「環境を意識した活動を地域に対して粘り強く行って、地球環境改善に少しでも寄与したい」と語る菅原工場長の眼差しは、常に未来へ向けられています。

会社概要

創立 1965年
資本金 70億6786万円
社員数 775名(うち熊本事業所83名 2010年3月20日現在)
業種 電気設備資材、給排水設備、ガス設備資材の製造販売
所在地 (本社)岐阜県安八郡輪之内町楡俣
(熊本事業所)熊本県菊池市泗水町永
TEL 0968-38-5582(熊本事業所)
http://www.mirai.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2010年 9月 5日号より