人・車・地球を元気にするメーカーの使命~「同友エコ」幹事長賞(株)ヴィ・クルー 社長 佐藤 全氏(宮城)

【環境経営で企業革新を―「同友会エコ」受賞企業の取り組み】(2)

佐藤社長

 昨年の全国総会でキックオフした中同協「同友エコ」。今回は、幹事長賞を受賞した(株)ヴィ・クルー(宮城)を紹介します。同社は、自社の経営理念に基づき、社員の自主的・創造的な取り組みによって環境経営に取り組み、新たな仕事づくりにもつながりました。

指針作成から第二創業へ

社屋

 (株)ヴィ・クルーの佐藤全社長は大学卒業後、父の経営する(株)オートパル(自動車販売、自動車整備)に入社し、専務を務めていた2004年、宮城同友会の「第15期経営指針を創る会」受講を契機に第二創業に挑戦しました。

 現場で、鉄の路肩灯(巻き込み防止のために後ろのタイヤを照らす装置)の腐食や球切れを目にした佐藤氏は、試行錯誤のすえ、新製品「SHINEMARKER」を開発。自動車部品のLED照明器具として初の製品となりました。

 06年には、(株)オートパルを車両販売部門、(株)ヴィ・クルーをアフター部門(車体整備、製品開発・販売、リサイクルパーツ販売)として分社化。経営理念は、「私達は人と車との絆を大切にし地球を救う企業です。私達はかかわるすべてが元気になる車創りに挑戦し続けます。私達は常に感謝を忘れず夢と感動を共有できる集団を目指します」と、(株)オートパルで創った経営理念が(株)ヴィ・クルーの経営理念ともなりました。

 現在、「人・車・地球を元気にするメーカー」という事業定義のもとで、さまざまな事業展開がなされています。

キーワードは「見える化」と「ちょいエコ」

エコの仕組み

 今回、「同友エコ」に取り組むきっかけとなったのは、09年秋「エコプロダクツ東北2009」で行われた宮城同友会の地球環境部会の例会でした。講師の平沼辰雄・中同協地球環境委員長の報告で「同友エコ」を知った佐藤氏は、「背伸びをしない。見える化」が大きなカギと学びます。早速、現場の社員が中心となって、次のことが取り決められました。

 (1)新たな設備投資をしての取り組みではなく、できることから始めてみよう、(2)あまり背伸びせず「身近なところからちょいエコ」の感覚で取り組んでいこう、(3)各部門ごとに話し合い、自分たちの計画を最後までやり遂げよう。

 まずは現状認識の一致をと、過去の電気・ガス・水道料金、燃料費、産業廃棄物処理料などを折れ線グラフにまとめ、社内に掲示する「見える化」に取り組みました。

 塗装部門では、ブースの外壁を囲って熱効率を上げる工夫をしたり、焼付塗装を行う際にこまめな温度管理を行うことで、燃料費の削減に効果があることが実証されました。

 各部門でも、投光機をLEDに変更したり、作業の事前計画をしっかりと行うことで、現場での作業改善に大きくつながりました。

 最初は「意味のないことでは?」と思っていた社員も、効果が目に見えることで、「ちょっとの改善でこんなに削減できるんだ」「次はこんなことに取り組んでみては」とさまざまな意見が出るようになりました。

 このような部門間の情報共有は、毎朝の全体朝礼前に部門責任者たちが集まって行われる打ち合わせで日常的に行われ、現場のスタッフ一人ひとりにも伝えられています。こういった場づくりが、トップの指示ではなく、ごく自然に行われているのが(株)ヴィ・クルーの社風なのです。

 「エコ商品開発」では、200Wの水銀灯と同等の照度を持つLED街路灯の製品を開発・販売を開始。官公庁でも導入されるなど、地域のCO2削減にも貢献しています。ソーラー式の街路灯も開発し、自然エネルギーのみでの灯具開発を行い、販売を開始しました。

 「新しい仕事づくり」では、バスのリユース部品販売を全国で行う「Vi―Mall」(インターネットショッピングモール)を普及し、バスの製造メーカーに採用されました。在庫の「見える化」で、「商品やサービスを買いたい」という買う側と、「新しい仕事づくりに取り組みたい」という売る側の想いを結ぶものです。

 また、電気バスの開発も進め、東北大学との産学連携が決定し、現在、試作が行われています。

同友会のネットワークで「中小企業ブランド」を

 佐藤社長は、「同友エコ」の取り組みについて、次のように話します。

 「費用の削減という視点で進めると重い空気になりがちですが、社員一人ひとりが自社の経営理念に基づき、自主的・創造的に取り組んだことで、現場での作業改善や環境分野での新たな仕事づくりにつながりました。結果として、売上が4割増したのに、CO2の排出量は9%削減、約200万円の経費削減もできました。自社の仕組みを同友エコのシステムにうまく絡めることができたのが、今回の大きなポイントでした」。

 来期に向け、すでに「CO2削減プロジェクト」が発足しています。

 「今後は、各社の“強み”を活かした『自分たちの商品=中小企業ブランド』を創りたいですね」「多品種、小ロットにも対応できる中小企業ならではの取り組みを全国同友会の輪で、点や線から面へ広げていきたい」。佐藤氏の挑戦は続きます。

経営理念

私達は「人と車との絆」を大切にし地球を救う企業です。

私達は「かかわる全てが元気になる」車創りに挑戦し続けます。

私達は常に感謝を忘れず「夢と感動」を共有できる集団を目指します。

会社概要

創立 2006年
資本金 2400万円
社員数 35名
業種 車体整備事業、インターネットショッピングモール運営、リサイクル事業、製品開発
所在地 宮城県白石市斎川字伊具田
TEL 0224-24-3511
http://vi-crew.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2010年 9月 15日号より