【経済データを読む】日本の貧困率

 昨年10月、長妻厚生労働大臣(当時)から日本で初めて相対的貧困率が発表されましたが、今年、児童扶養手当法改正の提案の中で未発表部分の数字が示されました。昨年の発表で、2007年の貧困率は、世帯全体で15.7%。子どもの貧困率は14.2%。個人にすると収入平均228万円が中央値、その半分の114万円以下が貧困層で、それが15.7%もいるとの驚きの発表でした。しかし、今回追加で示されたのは、大人が一人の母子・父子家庭で、 54.3%が貧困ともっと衝撃的な数字でした。

 2004年時点のOECD「レポート」の国際比較分析では、日本の貧困率は14.7%と30カ国中27位、母子家庭は58.7%、30位でワースト1でした。同レポートでは、この結果について、1つは政府の所得再分配政策の貧弱さ、2つ目にはパート賃金など低賃金層の存在を示唆していると指摘。パート職と正規職との賃金格差が拡大し続けており、問題の解決のためには、パート賃金の格差改善が極めて重要になっているということが言われていました。

 今回の日本政府の2007年調査では、貧困の悪化が顕著であり、貧困率を示す収入の中央値の金額も年々下がっています(表1)。さらに年齢でみると若年ほど収入が少ない状況(表2)を見れば、原因はパートの賃金格差ではなく、人をコストと見る国際競争企業が、「派遣・請負」という形で人件費を削減した結果とみるのが正しい理解ではないでしょうか。

※厚生労働省「相対的貧困率の公表について」は以下をご参照下さい。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/h1020-3.html

表1 日本の貧困率の推移

表2 世帯主の年齢階級別にみた1世帯当たり及び世帯人員1人当たり平均所得金額

「中小企業家しんぶん」 2010年 9月 25日号より