小規模に対応したプログラム型排出削減事業

【中小企業のCO2削減努力を活かす!―国内クレジット制度活用のすすめ】(5)

プログラム型排出削減事業とは

 太陽光発電設備住宅のように、年間削減量がきわめて小さいため、これまで国内クレジット制度を利用できなかった小規模排出削減事業も制度を利用できるようになりました。小さな削減量を大きな単位にまとめるという意味ではバンドリング型(本紙10月15日号参照)の進化したタイプと言えますが、相違点もあります。

 最初からプロジェクト参加者が固定されている通常型事業と違って、プログラム型では参加者を随時追加できます。これは、京都メカニズムの中の CDMの新しいパターンに準拠しています。世界最初のプログラム型事業は、メキシコの白熱電球から省エネ型電球への交換プロジェクトでした。

 この事業で重要な役割を担うのが「運営・管理者」です。通常型では、削減計画書を作成し、事前・事後の審査を受けるのは削減実施事業者ですが、プログラム型では、計画書作成や個々の削減活動の実施状況確認、排出削減量のとりまとめ、政府への認証申請、クレジット取引による収益の活用など、削減事業全般の運営・管理責任を持ちます。審査機関による計画書審査と実績確認審査を受けるのも運営・管理者です。

 個別のプロジェクト参加者からクレジットの移転を受けるのは共同事業者ですが、運営・管理者は共同事業者から業務委託を受け、実務を担当します。共同事業者と運営・管理者が同一でもかまいませんが、自治体が企画するプロジェクトなどでは、運営・管理を地域のNPOや団体に業務委託することも考えられます。

具体的な取り組み事例

・家庭の木質ペレットストーブによるCO2削減量をクレジット化

 木質ペレットを製造・供給する津軽ペレット協同組合は、ペレットストーブを使用する家庭をとりまとめ、「津軽ペレットストーブ倶楽部」を発足。初年度、8世帯で開始するプロジェクトを今年度中に60世帯、平成24年度には100世帯に広げる計画です。これにより、1世帯あたり年平均約1トンの CO2を削減します。共同実施者(購入者)は、森の恵みに由来する素材や商品販売を行う民間事業者(東京)で、国内クレジットの売却益は、津軽地域の森林保全活動などの支援に活用していくとのこと。

・そのほか、電気自動車の普及推進のため、メーカー主導でユーザー会を組織しクレジットを創出するプロジェクトや、商店街で照明をLED化するため、組合主導でプログラム型に取り組む事例などが続々と登場しています。

 プログラム型排出削減事業は、世界的にも例の少ない画期的なスキームです。私たちJCTXグループも積極的に推進していますが、一般家庭、商店街や工業団地、ビルのテナント会など応用事例が広がっていくことを願っています。

向井征二/(株)日本環境取引機構代表取締役(愛知)(元・経済産業省「中小企業等CO2排出削減検討会」委員)

「中小企業家しんぶん」 2010年 11月 5日号より