【アメリカ視察報告】(2) 官民協力して中小企業を支援

中小企業憲章制定後の課題を探る

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 前回は、連邦中小企業庁(SBA)の政策の概要を紹介しました。

 今回は、その政策が具体的に実施されている地域の機関を視察しましたので紹介します。

 1つは、中小企業育成センター(SBDC)。全米938カ所に設置され、起業家育成をはじめ財務・マーケティング、生産管理、技術支援、貿易などの経営支援を実施しています。

 運営資金は、SBAが半分を負担し、残り半分が州・地方政府や大学、商工会議所等から拠出されています。SBDCは、1977年に8州でパイロット・プログラムとして試験的に設置し、1980年から正式プログラムとして全米でスタートしています。

 私たちが視察したSBDCは、ニューヨーク市マンハッタン地区のペース大学内にありました。

 SBDCのサービスのメインは無料のカウンセリング。こちらのSBDCの概要を説明していただいたデビットソン所長によれば、起業やビジネスプラン作成の要望のほかに、投資先を探している人たちの相談も多いとのこと。マンハッタンという土地柄ゆえか、レストラン経営をやりたいという相談が多いそうです。ニューヨーク州では24カ所でSBDCが展開しています。

 もう1つの政策実施機関は、SCORE(スコア・退職管理職サービス団)。全米370カ所に拠点を置き、1万500名の引退した中小企業経営者など(約2割は現役)を経営相談のボランティアとして組織しています。

 1953年に中小企業支援のために始めたボランティア運動に沿革があり、1964年からSBAの主導で全国組織に編成され、今では年間800万件の無料の相談サービスを実施しています。

 私たちは、アーリントン経済開発公社のオフィスの中にあるSCOREの拠点「BizLaunch」を見学しました。同公社のイェー氏の説明によれば、国防関係の会社の社長経験者も3人いて、国防総省の調達先となる面倒な手続きをサポートし、成功事例が生まれているとのことでした。ペンタゴン(国防総省)の所在するアーリントンならではの経営相談と言えます。

 同公社は、バージニア州アーリントン郡(カウンティ)の政府機関で、30名の地方公務員で運営し、企業誘致から不動産開発、中小企業支援などを手掛けています。

 イェー氏は、2011年から始まるアメリカ軍の縮小により、軍需依存で発展してきたアーリントン郡では約2万人の失業者の増加が予測されており、産業の多様化(ダイバーシティ)が喫緊の課題になっていると強調したことが印象的でした。

 以上のように、米国におけるワンストップ型の中小企業支援の現場視察では、官民が協力して、個人が独立して事業を営む機会を保障し、地域の中小企業をしっかりと支えている姿を確認することができました。

米国の中小企業の定義と経済に占めるウェイト

 米国の中小企業は、製造業が従業員数500人以下、卸売業が従業員数百人以下、小売業とサービス業が年間売上額700万ドル以下、一般建設・土木業が年間売上額3300万ドル以下、特殊工事業が年間売上額1400万ドル以下、農畜産業が年間売上額75万ドル以下、と定義されています。

 中小企業数は、2750万社(2009年)。従業員を雇用する企業の99・7%を占めており、民間セクター雇用者の約半数を雇用しています。

「中小企業家しんぶん」 2010年 12月 15日号より