自立型企業へ国際的企業連携を研究 「日タイビジネスマッチング」[上]

 9月3~4日、タイの首都バンコクで、「日タイビジネスマッチング2012」(チェラロンコン大学サシン日本センター・阪南大学中小企業ベンチャー支援センター共催、後援・大阪同友会、大阪産業振興機構、タイ投資委員会、カシコン銀行)が開かれ、大阪、兵庫、茨城同友会会員など、18社と中同協から21名が参加しました。日本からのタイへの直接投資総額が4600億円(2012年上半期)となる中、日本の中小企業に連携を期待する動きが活発化しています。視察の様子を2回にわたり紹介します。

(中同協事務局長 平田美穂)

熱いタイ市場

 9月1日深夜に関西空港を発(た)ち、時差2時間のバンコクに2日午前4時過ぎに着陸。蒸し暑いが東京や大阪より気温が低い。

 そのまま一行はチャトチャック・ウィークエンド・マーケットへ。土日限定のマーケットで英語も通じます。敷地面積は1・13平方キロメートル、1万5000以上の日用品、食品、衣類などの屋台があり、行き交う客層も海外の観光客など幅広く、日に20万人以上が訪れると言います。

 庶民が購入する日用品は激安だが、高級民芸陶磁器「ベンジャロン焼」の産地直販店もあり、ロイヤルボーンチャイナのコーヒーカップのセットが2脚で2000バーツ(1バーツ、2・7円)と日本で販売されている5分の1の値段。美しく細やかに1つ1つ絵付けされた陶磁器は高級な有田焼のようです。

中小企業の国際化とは

 3日は朝から、バンコクの国立チュラロンコン大学のサシン経営管理大学院で、日本の中小企業・団体とタイの中小企業の連携の可能性を探る「日タイビジネスマッチングセミナー2012」が開催されました。

 日本からは連携のパートナーを探す18企業・団体から21人が、タイ企業8社が参加しました。

 日本側の団長を務めた豊岡敬氏(日本フッソ工業(株)社長、大阪同友会理事)は、「円高も影響し、産業の空洞化、ボーダレス化が進み、日本製品の国際競争力が落ちている。親会社の顔だけ見ていれば良かった時代から、自立型企業となって自ら市場や取引先など国際的にも連携できる企業づくりが期待されている。タイはアジアの交差点。現状を知り地元企業と交流できるよい機会」とあいさつ。企画運営を担当する関智宏・阪南大学准教授や由・サシン日本センターコンサルタントからも、「経営課題解決のために国際的に連携して共同研究していこう」と呼びかけられました。

 その後、ルチパンアッサラット・カシコンリサーチセンターマクロ経済調査主任研究員やアチャラー・スントンクルット・タイ投資委員会事務局電気・電子部課長らがタイの産業構成や直接投資のメリットなどについて報告。

人口30億の市場へ

 サシン大学院の藤岡資正エグゼクティブディレクターMBA専攻長は、タイの優位性は日系企業が多く環境が整備されていること、自動車や家電などの産業集積、東南アジア諸国連合(ASEAN)にあり、中国、インドなど併せて30億を超える人口を対象としたマーケットの要所にある。課題としては幹部育成、急速に進む高齢化、人口ボーナス期の終わりを挙げました。

 また、タイなど新興アジア市場を分析する際には(1)地域格差の大きい国はバンコクなど主要都市を分析単位とする、(2)購買力を測る際、フロー(所得)だけでなくストック(固定資産)に着目する、(3)シャドウエコノミー(闇経済)の規模を考慮することが重要と指南しました。

 その後、中同協を含む16社がプレゼンテーションし、20の企業間交流が行われました。

(次号につづく)

「中小企業家しんぶん」 2012年 10月 5日号より