新市場・国際連携の足がかりを自らつかむ~「日タイビジネスマッチング」(下)

連携相手となるか現地で確かめる

 地元紙(NNA)の取材に対して、畑野吉雄・大阪同友会代表理事(中同協企業連携推進連絡会代表)は、「東日本大震災以降、電力や円高の問題から、大阪の中小企業の海外進出意欲が急激に高まった。アジアは急速に変化しており、実際に目で見る必要がある」と今回の訪問の意義を強調していました。

 プレゼンテーションでは、中同協を含め18社・団体が登壇。

 「当社製品の部品製造などができるパートナーを求めている」東西田豊・(有)大和製作所社長、「販売先としては水処理プラント、仕入れ先としては鋳物や製缶、機械加工ができる企業を求めている」町井秀年・阪和化工機(株)社長、「フッ素樹脂コーティングを行えるJV(ジョイントベンチャー)のパートナーを探している」豊岡敬・日本フッソ工業(株)社長、「農業技術の改善を必要としている企業や小売業など、日本の農業技術で連携したい」石澤雄一郎・但馬地域経済活性化機構代表理事など、それぞれの思いが語られました。

 2日目は2グループに分かれて企業の視察。自動車生産基地であるチョンブリ地域はJINPAO社とサンチャルーンツールセンター社、家電メーカーの多いアユタヤ地域はロジャナ工業団地事務所とタイニッシンモールド社を見学しました。

最新鋭の日本製工作機械を導入したJINPAO

 JINPAO社は、板金、プレス、金型加工などと、溶接や塗装まで一貫した金属加工ラインを持つ台湾系タイ企業。特殊モニターのシャーシーや航空機のメーターケースなどを製造し、2002年からデジタル板金加工を行いバーチャル試作もできるようになっているため、経験が浅い社員でも対応でき低コストで対応できるようになりました。

 敷地面積2万5000平方メートル、従業員数650名ですべて正規雇用。取引先は日本はじめアジア各国からアメリカやドイツ、フランスにまで及び、自動車や家電だけでなく、業務用電気機器やオートマティック機器、航空機関連メーカーもあります。

 インドやスロバキアに工場を展開しています。

 金属加工機械の総合メーカーAMADAのタイのモデル工場でもあるためか、工場内には最新鋭の機械が導入され、ラインをつなぐ予定とのこと。

 ISO9001、14001を取得し、5Sも徹底され、多品種少量生産にも対応できる仕組みを作っており、人材育成に力を入れています。

女性の人材育成がカギ

 サンチャルーンツールセンター社は、プレス金属加工(スタンピング)部品製造を行い、敷地面積1万5000平方メートル、社員数425名の会社です。

 高品質での顧客満足を狙い、売上高に占める割合は自動車部品85%、家電15%。トヨタ生産方式に学び、徹底した品質・納期管理を行っています。

 自動車関連だけで売上が昨年対比47%増で人手不足になっているとか。

 業務改善を行いながらも、人材育成、特に「タイでは男性より女性が熱心に働くので、女性の力をいかに引き出すかに注力している」とのこと。

 品質管理を徹底しながらも、幹部社員が常に一人ひとりの社員の生活状況をつかみながら、声をかけている姿に日本的経営を見るようでした。

 細やかな作業も丁寧に行う女性社員の笑顔が印象的な会社でした。

「5S」や「改善」に魅力

 アユタヤ視察はロジャナ団地とプラスチック射出成型のタイニッシンモールド社、工作機械メーカーソディック社を見学。

 いずれの企業も日本の中小企業がこれまで築いてきた生産管理方式が採用され、徹底した品質管理と人材育成に力を入れようとしています。

 宿泊したアジアホテルの隣にオープンするという和食レストランの名前が「改善」。タイがあこがれる日本。

 追い上げられつつ、日本の中小企業のさらなる生産管理、技術革新は、国際連携によりさらに鍛えられるものと確信しました。

(中同協事務局長 平田美穂)

「中小企業家しんぶん」 2012年 10月 15日号より