Ⅱ 経営理念を実践する過程 (4)経営方針と経営計画の実行と評価

【社員とともにめざす企業像へ変革を~企業変革支援プログラム ステップ2】11

1.経営方針、経営計画の葛藤

 10年近く前になりますが大手シンクタンクが主催する「事業計画作成」のセミナーを受けました。その時、講師が「経営理念は社長様に一時間程インタビューさせていただきましたらお作りします」という発言がありました。その時はその発言に非常に反発していました。

 9月の神奈川同友会横浜支部例会で次のような報告がありました。「最初のセミナーでできた経営理念は自分では納得していなかった。要は講師の顔色を伺って、講師に合格点がもらえる経営理念を作ったに過ぎなかった。経営理念を掲げ営業したお客様に申し訳ないと思った。今度こそ心の叫びのような魂が入った経営理念を作りたく思ったので2回目を受講しました」。

 また、2月に行われた経営労働委員会である同友会の事例紹介として「経営指針作成セミナーの流れは自分探しから経営指針成文化で終わってしまい実際の企業づくりにリンクされていないため、具体的に企業づくりに生かせる内容とすることが課題です」とありました。やっと自分が求めていた答えを見出した思いです。

 経営理念は自分の納得で済みますが(本来はそうではなく前出の横浜の報告者のように早々に気付かなければなりません)、経営方針、経営計画は具体的内容でかつ成果が見えなければなりません。経営指針成文化セミナーでは講師はそこまで踏み込めません。だから、わたし自身も10年前に大手シンクタンクのセミナーを受けざるを得なかったことに今頃になって気が付いたのです。

2.企業変革支援プログラムのコンセプト

 ステップ2の「はじめに」に「ステップ2は、経営者が自分で気付きを得られるように配慮して構成されているので、社内の仕組みづくりや社員教育を具体的に考えることもできます」と説明しています。

 しかも、設問項目ごとに段階を追ってレベルアップできるように解説していますのでいきなり理想的な経営方針、経営計画を立てるようにはなっていません。

 自己分析シート優先順チェックシートのウエイトは各社の状況に合わせ変更することも許しています。また、そうできるように使いこなしてください。定量的に計れない重要事項を社内でコンセンサスを得られれば優先順位を恣意的に変更することも可能です。

 ただし、確実に成果を上げるためには経営方針、経営計画は具体的に数値として評価できる表現が求められます。往々にして売上よければ全てよしになっていないでしょうか。よければいいなりに、悪ければ悪いなりの評価、対策が必ずあるはずです。

 そのように、実行と評価を無理なく段階をおって繰り返してください。

(株)エニー 代表取締役 佐々木雅一(神奈川)
 中同協企業変革支援プログラム検討プロジェクト委員

「中小企業家しんぶん」 2012年 11月 5日号より