急がれる地域分散型エネルギーシステムの構築

中小企業の出番をつくろう

 未曾有の福島原発事故以来、脱原発の世論の高まりと共に、代替エネルギーへの動きが急速に高まっています。中同協では、本年度の総会議案書で第2章第3節「中小企業憲章の内容の実現をめざして」の中で「今般の原発事故の教訓の1つは、巨大施設と長距離の電送に依存するシステムではなく、災害に強く地域の雇用に貢献する地域分散型エネルギーシステムづくり、エネルギーの地産地消が求められていることです。この点でも中小企業の活躍が期待されており、原子力政策を含めエネルギー政策の抜本的転換が求められています。」(総会議案集13ページ)と指摘しています。

 さらに、「中同協・2013年度国の政策に対する中小企業家の重点要望・提言」では、「持続可能な社会システムの構築」として「太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーの産業化・事業化に取り組む中小企業を産学官と市民、金融の連携で支援する。中小企業のCO2削減の自主的取り組みが社会的経済的に評価される仕組みを構築する。また、年間のエネルギー消費量が概ねゼロになる『ゼロ・エネルギー住宅』の普及促進をはかり、中小企業の仕事づくりと省エネ技術の向上につなげる。」(総会議案集34ページ)として中小企業の仕事づくりにつなげていこうと提言しています。

 特に、7月1日からスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は自然エネルギー開発に拍車をかけています。この制度は再生エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、一定価格で電気事業者が買い取ることを義務づけた制度です。

 マスコミ報道も熱が入り、「日経産業新聞」は連日「環境・新エネルギー」特集に1ページを使っていることはご存知の方も多いでしょう。

 全国紙の社説でも盛んに論陣が張られています。「毎日」が「エネルギー大転換・風力発電、潜在力もっと生かそう」(8月8日付)では、風力発電はこの10年で世界の導入量は10倍に増えたが、日本は第13位で立ち遅れ。陸上と洋上をあわせると住宅以外の太陽光発電の10倍以上の潜在力があるとし、特に北海道、東北が適地としています。風車は部品が1万~2万点あり、産業振興、雇用への効果も期待できるという。

 「朝日」は「エネルギー政策、もっと熱に目を向けよう」(8月13日付)では東京スカイツリーが地中熱を利用した日本初の地域冷暖房が行われていることを紹介。太陽や大地、海、川が持つ熱、地下鉄や変電所の廃熱、ごみ焼却時の熱など社会に隠れた無数の熱エネルギー利用の道を広げることを提唱。さらに「自然エネルギー・普及への壁を取り払え」(9月7日付)では、日本の発電量に占める自然エネルギーの割合は現在約10%、水力を除けば1%強にすぎない。ドイツの自然エネルギー比率は、90年代、日本より低かったが、現在は約20%、20年には35%に伸ばすという。日本も民間投資への筋道を政府は明らかにし、規制の見直しを大胆に進めるべきと強調。

 「日経」は「国産シェールオイルの開発技術を生かせ」(10月11日付)で、秋田県由利本荘市で採掘されたシェールオイルは採算性に課題はあるが、掘削技術を高め海外に生かすチャンスとしたいとしています。

 現在のところ、報道される自然エネルギー開発事例は、大手企業が大半を占めています。しかし、同友会の会員も自社の技術力、販売力を生かし、地元自治体、研究機関と連携しこの分野で活躍する企業は増加することが期待されます。本紙では、会内の事例を積極的に紹介していきます。

(K)

「中小企業家しんぶん」 2012年 11月 15日号より