Ⅲ 人を生かす経営の実践 (3)労働環境の整備

【社員とともにめざす企業像へ変革を~企業変革支援プログラム ステップ2】14

 この項目の「ねらい」には次のように書かれています。「社員にとって会社は、生活保障や人生設計について最も重要な場です。社員が自分の将来に希望を持ち生涯を展望しながら、仕事と生活の調和がはかられ、安心して快適に働きつづけられる労働環境を実現することをねらいとしています。」

 就業規則などが無く、慢性的な社内トラブルや労使関係の悪さに悩んでいたある会社では、就業規則・有給休暇制度・健康診断の導入や、事務所改築、新工場への移転など、経営者が「これで働きやすくなるだろう」と思った事を矢継ぎ早に取り組みましたが、労使の不和はまったく解消されませんでした。

 この経営者は同友会で、社員のことを真剣に考えず自分の考えを押し付けてきたことが失敗の原因だと気付き、「人を何よりも大切にする」と経営姿勢・理念を改め、労使が対等な立場で話し合う関係づくりに取り組みました。また会社の目的や仕事の意義・価値を常に語るようにしました。

 そこから社員に自主性や責任感が生まれ、社員たち自らが「より高い質の仕事ができる職場」「自分たちが働きやすい職場」を考えるようになりました。社員間・労使間の人間関係は良くなり、労使関係と労働環境は以前からは想像もつかないほど改善されました。

 真に「快適な労働環境」は、まず経営者が人間尊重の経営姿勢を確立し、経営理念・会社の目的が労使間で共有され、労働者の声を理念に沿って反映させながら取り組んで、初めて実現可能ではないでしょうか。

 企業変革支援プログラムの使い方として、経営指針の策定や社内会議、社内のコミュニケーションツールとしてなど、社内で日常的に使うことを推奨しています。労働環境の整備は特に、実際の働き手である社員の参画なくしては進まない課題です。そのための具体的な視点やヒントが、「ステップ2」には豊富に盛り込まれています。「ステップ2」を社内で積極的に活用することが、労働環境整備をすすめる近道となるでしょう。

愛知同友会 事務局 政廣俊介
(中同協企業変革支援プログラム検討プロジェクト委員)

「中小企業家しんぶん」 2012年 12月 15日号より