Ⅳ 市場・顧客及び自社の理解と対応状況 (1)市場・顧客の変化と顧客ニーズの把握

【企業変革支援プログラム ステップ2】16

 「どのように市場・顧客の変化と潜在ニーズを調査・情報収集し共有していますか」の問いかけは、経営者にとって最も高い関心事です。「何とかして顧客が求めるものを理解し、最適な商品を提供したい」と日々考え続けています。

 しかし、大切な関心事ですが、考えるべきポイントが曖昧な場合もあります。

 第1のポイントは、「あなたの会社の顧客は誰ですか」です。

 「顧客」が明確になることでニーズが見えてきます。

 当社は、介護保険の居宅介護支援事業(いわゆるケアプラン作成)の業務に従事しています。

 介護サービスを利用する利用者は当然に顧客ですが、うかうかしていますと「プラン作成の依頼をしてくれる人」が顧客のように思えて、地域包括支援センターの職員や病院の地域連携室の職員が顧客と錯覚してしまいます。

 ケアプランは、利用者と家族が「幸せに在宅で生きること」を支援するのですから、利用者と家族が顧客だと言えるでしょう。

 さらに一歩進めて「では誰にどのような価値を提供するのか」と自問自答してみると、「ケアプランの作成」は、いわゆる「作業」です。「利用者と家族」が幸せに在宅生活を続けることで「あなたの場所であなたらしく生きぬく」支援をするのが、当社の提供する価値だと考えることができます。

 第2のポイントは、顧客の「潜在ニーズ」を継続的に把握することです。

 文字どおり「潜在」しているのですから、自然に認識することは困難です。さらに言えば、顕在しているニーズすら見逃している場合もあります。

 「共有」にも関連しますが、情報の宝庫は「現場」です。当社に置き換えると、現場に密着しているケアマネージャーが知っている情報は日報などで集約されます。また、執務室で情報が活発に交わされています。

 これらを丁寧に確認し、定期的会合や面談時に、意味や背景を口頭で訊(き)き、共感し合うことで理解が深まることが多いのです。

 情報集積後の分析は、違った視点や違った考え方を持っている社員集団の中で、各人が得られた情報を共有することで、その意味や背景の理解が組織的に深まるという機能が発揮されます。

 当然に、業界業種によっては、自社に適合した顧客トレンドを把握する調査方法の確立は大切なことです。

香川県ケアマネジメントセンター(株) 代表取締役 林 哲也(香川)
中同協企業変革支援プログラム検討プロジェクト委員

「中小企業家しんぶん」 2013年 1月 15日号より