経営指針に基づいた経営実践を~エイベックス(株) 代表取締役会長 加藤 明彦氏(愛知同友会代表理事)

【特集】中同協第45回定時総会―問題提起(企業づくり)

情報をつかみ、危機感の認識を強める

同友会企業はどんな企業づくりをしていくのかについて考えたいと思います。まず、皆さんは本当に本気で同友会らしい経営指針に基づいた経営を実践しているでしょうか。私の問題提起はこの1点にまとめられると思います。

今売り上げが伸びない中で、業界全体が悪いとか社員が自主的に動いてくれず業績が伸びないと聞きますが、本当にそれでいいのだろうかという思いが私にはあります。私は愛知で自動車関係の会社を経営しています。空洞化の波がどんどん押し寄せてきます。そんななか私自身が一番「このままでは会社がつぶれるのではないだろうか」と危機感を持っています。どの会社もいずれはつぶれます。この認識を持っている人たちが少ないように感じます。

議案集で特に大事なのは「第2章中小企業をめぐる情勢」です。ここをしっかりと読みきってください。自分の持っている知識のみで経営判断をしている人も多いのではないでしょうか。もう1度第2章を読み、時代認識を高めていただければ、本当にこのまま事業を継続できるのだろうか、今の仕事はあるのだろうかという危機感が湧いてくると思います。自分の知識のみでなく、広い視野の情報をとることが大事です。

愛知同友会の方針は「同友会らしい黒字企業を目指そう」をテーマとし、「危機感を共有してチャンスづくりに!」をサブテーマにしました。まさに情報をしっかりととり、自社が非常に危機の状態にあると認識すれば、そこからチャンス(市場創造)が生まれてくると思います。

「企業変革支援プログラム」を仕事づくりに生かす

もうひとつの問題提起は、「企業変革支援プログラム」にきちんと取り組んでいるかどうかです。単に社員との関係づくりで「企業変革支援プログラム」をやっているのでは共育ちとはいえません。「企業変革支援プログラム」の活用を方針に位置づけ、社員とともに自社の経営課題を徹底的に話し合い方針へと高める中で、同友会の共育ちをしっかりと実感できるのではないかと思います。

「企業変革支援プログラム」を自社の仕事づくりに生かしているでしょうか。私も今年の2月頃にステップ2に取り組みました。ステップ1の点数の低い場所を、ステップ2を活用することで今まで見えなかった経営課題を認識できます。ステップ1・2を活用することで、新しい仕事づくりの手がかりや戦略、方針にまで影響を与えていくのだと思います。

当たり前のことを当たり前にやる

今回の分科会報告のまとめを見ると、結構表面的で「労使見解を改めて勉強しました」とか「三位一体活動をしっかりやらなければいけない」という意見が目立ちます。そうではなく、それを具体的にどう実践に移していくのかを考えなければ意味がありません。経営指針を作成する時にも、採用を戦略として描かなければいけません。ただ「採用をする」ではだめなのです。当たり前に聞こえるかもしれません。しかし、われわれ同友会会員は当たり前のことを当たり前にやらなければいけないと考えています。

経営指針に基づいた経営を実践しないと私たちは語り部(べ)にはなれません。会員さん一人ひとりが語り部になって自社について報告できるかどうか。語ることができるのであれば、経営指針が本当に浸透していると言えるのではないかと思います。

「経営者の責任」と労使見解でも言われていますが、本当に経営者として覚悟をしているのだろうか。経営指針に基づき採用を行い、強じんな企業づくりへと唱えていますが、覚悟しているのであればこれは展開されなければおかしいのです。

各社の経営理念が展開されるような時代にあった情報、情勢をきちんと読み、それによりはじめて本当の戦略ができ、社員とともにきちんと日常の中で実践していく。こうしたことが本当の仕事づくりにつながっていくのだと思います。

「中小企業家しんぶん」 2013年 8月 5日号より