2013年10~12月の同友会景況調査報告オプション調査では、賃上げについて2013年の状況と来春の意向について聞きました。(907社回答) *本調査での「賃上げ」とは、定期昇給、ベースアップ、一時金いずれかのアップのこと。
(文責 中小企業家同友会全国協議会 平田 美穂)
昨年の賃上げ「実施」54%
「今年、貴社の賃金に変化がありましたか」との設問に関しては(図1)、「賃上げを実施」54%、「据え置いた」44%、「賃下げを実施」2%となっており、「据え置いた」と「賃下げを実施」の理由は、「業績が伸びなかった」48%、「外部環境の不透明さ」が41%となっています。
景況調査で「業況水準DIでは、調査開始以来最高の数字」を反映して、会員企業が社員の賃金を上げるなど待遇改善に積極的に取り組む姿勢が現れている半面、業績不振と外部環境の不透明さで半数近くの会員が賃上げできずにいる現状が浮き彫りになりました。
20業種分類(図2)では、「食品等製造業」と「運輸業」は「据え置いた」が、それぞれ56%、74%と「賃上げ実施」を上回り、個人消費の伸び悩みと円安による輸入材料やエネルギーコストの上昇などの影響が伺われます。
また、好調が伝えられる建設業でも「民需中心」では、「賃上げ」52%、「据え置いた」49%が拮抗。理由は「外部環境の不透明さ」54%で、消費増税による需要の前倒しによる一時的な景気浮揚と見ていることがわかります。
来春賃上げ率3%以下が8割
「来春の賃上げの意向」(図3)では、「賃上げ意向」が「ある」55%、「ない」16%、「わからない」28%で、積極的に対応しようとしている会員企業の頼もしい姿が見えてきます。
賃上げ意向のある企業の賃上げ率を1%刻みで聞いたところ、「1~2%」が40%、「2~3%」32%で、消費税率3%を上回る賃上げを予定している企業は20%程度で、回答企業全体の1割程度にとどまります。
記述回答では、賃上げの理由に、「社員のモチベーションの向上が、業務多忙の難局を乗り切る最大の要素である」や「技術・知識・経験が増して行くのだから、昇給しないと対価に差が生じる」と、社員の士気を高めることを大切にしている企業や、「消費税、保険料アップへの対応」と社員の家計を配慮した対応をしている企業もあります。
一方、賃上げをしない、見送る理由については、「先行き不透明のため」「消費増税による落ち込みが予想され、すでに取引先からの発注減を言われている」「消費税の価格転換ができるかどうか心配」など厳しい現状が伝わってきます。
業況判断DI次々期(今年4~6月)の見通しが、マイナス16と、急降下が予想される中で、賃上げに踏み切れない苦しい経営者の胸のうちが伺えます。
「中小企業家しんぶん」 2014年 2月 5日号より