介護と育児をできる環境が必要な時代

 広島での第44回中小企業問題全国研究集会で初めて「介護」をテーマにした分科会が行われ、社員の介護問題の深刻さが大きな反響を呼びました。ダイヤ高齢社会研究財団によれば「介護リスクのある親」を持つ会社員は51~55歳で51.4%、56~60歳で44.5%、46~50歳で42.7%、41~45歳で30%となっています。

 要介護認定患者の数は2000年の218万人から2012年の533万人と2.4倍に増えており、認知症高齢者は2010年280万人から2025年470万に増加、単身高齢者も2010年500万人から2025年700万人に増加と予想されています(厚生労働省)。2012年の統計では、有業者で介護を抱えている人の割合は、55~59歳が21.3%と最多。雇用者の40~59歳合計では59.3%、58万9000人が介護を抱えています。

 介護を理由に離職する人は、2008~2012年の合計で48万6000人、特に男性が増える傾向です(表)。男性の生涯未婚率が2010年19.1%、2025年には28.5%になると予想される中、「申し出にくい」などの理由で介護問題は潜在化しやすいため実数はさらに多いと思われます。介護を抱える人の多くは、企業の幹部や中堅社員と思われるだけに大きな問題です。一方、介護休業規定を整備している企業が3割台と非常に低い水準にとどまっています。「もう1度職場復帰できる環境が必要です。20~30代の育児休暇がとりやすい職場は介護でもその雰囲気になる」と全研の分科会で報告者を務めた春日キスヨ先生は指摘しています。

 さらに2012年の時点で女性の第1子出産時の平均年齢が30.3歳、男性は32.3歳。育児をしている者は999万5000人で、年齢別では35~39歳が322万人と最も多くなっており、高齢化が進んでいます。育児をしている雇用者665万人の中で、育児休業制度の利用はわずか141万3000人。晩婚化で介護と同時に育児もしないといけない社員が出てきています。企業にとって社員の介護と育児を保障できる環境づくりが男女問わず必要な時期を迎えています。

表 介護・看護・出産・育児のために離職した15歳以上人口

「中小企業家しんぶん」 2014年 4月 25日号より