長期債務残高増加と個人貯蓄率の低下

 緊張が高まっているウクライナ問題において、長期債務への援助が欧米からなければ破綻懸念と報道されています。しかし、世界の政府債務残高対GDP比で言えば、2013年ウクライナは92位の41%に過ぎず、断トツ世界1位の日本で243%、2位ギリシャで173%、3位レバノン139%、5位イタリア132%、13位アメリカ104%です。

 日本の長期債務残高は1980年に129兆円でGDP比52%でした。そのときの家計の貯蓄率は17.9%もありました。日本の長期債務残高と家計の貯蓄率は反比例しています(表)。「国民の預金が減り、国の借金が増える」日本の国が豊かになるのかどうかの点で消費税導入・引き上げを見ると、消費税導入の1989年には長期債務残高289兆円でGDP比70%、貯蓄率12.9%。5%に引き上げられた1997年には長期債務残高570兆円でGDP比109%、貯蓄率9.3%。2013年には長期債務残高1163兆円でGDP比243%、貯蓄率は0.9%にまで下がっています。このままでは2014年にはマイナスが予想されます。1997年の消費支出は283.2兆円、家計貯蓄は28.9兆円でしたが、2012年の消費支出は281.0兆円、家計貯蓄2.9兆円であり、消費は変わらず貯蓄が10分の1となっています。貯蓄率の低下は家計の可処分所得を消費に回さざるを得ない結果といえます。

 国も貧乏、国民も貧乏になっているといえます。また、13年末家計の金融資産は1644兆円と過去最高、現預金も20兆増の873兆円もあるとされていますが、貯蓄率の低下との矛盾は金融資産の半分以上を持つ60歳以上世帯で貯蓄を取り崩している層があることも引き下げ要因と思われます。

 貯蓄率=貯蓄÷可処分所得(貯蓄=可処分所得-消費支出)

表 日本政府総債務残高と貯蓄率の推移