中小企業の社会負担

 「中小企業の7割が赤字で税金を払っていない」、こうした意見を根拠に外形標準課税を中小企業に広げることが検討されています。本当に中小企業は社会負担をしていないのでしょうか。

 まず2010年度の法人税で比較すると、約9兆円納められた法人税のうち大企業が納めたのが4.5兆円です。つまり黒字法人の98%、74万社の中小企業が同じ4.5兆円を納めいることがわかります。

 また、赤字企業は法人税を納めていないというキャンペーンがされています。しかし、2013年版中小企業白書での163万社の中小企業の人件費総額は52兆3118億円、租税公課2兆9338億円を元に負担を計算すれば、その提起も疑わしくなります。中小企業で働く正社員の平均給与を420万円(中小企業白書より)として計算すると、労災保険0.3%(本人が支払う分0%)1569億円、一般拠出金0.005%(本人0%)26億円、雇用保険0.85%(本人0.5%)4447億円(本人2616億円)、健康保険4.74%(本人4.74%)2兆4796億円(本人2兆4796億円)、介護保険0.775%(本人0.775%)4054億円(本人4054億円)、厚生年金8.206%(本人8.206%)4兆2927億円(本人4兆2927億円)、児童手当拠出金0.15%(本人0%)785億円となります。合計企業負担は7兆8604億円、本人負担合計7兆4393億円となり、合計で15兆2997億円を中小企業が支払っていることになります。

 この計算を別途法人企業統計の資料からいえば、2011年度のデータでは人件費118兆円を元に、倍の15.5兆円に租税公課の5兆円を足して20兆円以上を企業が負担しています。従業員本人負担分15兆円や石油石炭税、事業者としての消費税、さらに政府に代わり徴収義務の事務経費などの間接費を足せば大企業以上の35兆円以上を負担していることになります。

(外形標準課税についての連載を7月5日号からはじめる予定です。)

表 大企業と中小企業の粗付加価値額などの比較

「中小企業家しんぶん」 2014年 6月 25日号より