【日本中小企業学会第34回全国大会】中小企業が果たす社会的役割を議論

統一論題「多様化する社会と中小企業の果たす役割」

 日本中小企業学会の第34回全国大会が9月13~14日、東京の桜美林大学で行われ、同友会会員企業や中小企業振興基本条例に関連した研究成果も報告されました。

 2日目の統一論題で「中小企業経営・起業における『主体の多様化』をどうとらえるか」と題して報告した川名和美・高千穂大学教授は、人口減少に伴う地域の社会的役割の担い手減少の中で、それを補う形で社会的企業が増えているとして、広島同友会の女性部会員が共同出資した起業事例(地域資源に着目し、デザイン性に富んだ帆布製品のブランドづくり)を紹介。「女性、若者、高齢者、外国人、障がい者など多様な“プレイヤー”が社会的企業を担うようになり、こうしたプレイヤーが自ら学ぶ場をつくり自助・自律の方向を模索していく時代」と指摘しました。

 今回の大会では、統一論題のほか、「中小企業と人材」「中小企業と政策」「中小企業とCSR」「地域の中小企業」などの自由論題で8つの分科会も開かれました。

 「自治体中小企業政策における政策評価」と題して報告した本多哲夫・大阪市立大学教授は「自治体の中小企業政策の評価は、支援件数やイベント開催数などに留めず、その政策効果や因果関係の実態を明らかにすることが必要」と提起、大阪市のビジネスマッチング支援施策の利用企業を分析すると、「業績改善や下支えという経営上の成果をもたらしている可能性が高いことが見えた」と報告しました。このように、中小企業振興基本条例や、中小企業振興会議などを実効あるものにする取り組みと関わる貴重な研究成果が出てきており注目されます。

 全体会の国際交流セッションではBrigitteHoogendoorn・エラスムス・ロッテルダム大学(オランダ)教授、KimJaehyun・建国大学校(韓国)教授、YukoAoyama・クラーク大学(アメリカ)教授の3氏が、企業の環境CSRや社会的企業の意義をめぐって講演しました。 大会と並んで行われた会員総会では、次回35回全国大会は福岡の福岡大学で2015年10月2~4日に開催されることなどが確認されました。

「中小企業家しんぶん」 2014年 10月 5日号より