【エネルギーシフトに挑戦!】愛媛県内子町 最終回 木質バイオマス「発電」より「熱利用」

未利用材の価格が倍に

 「未利用材の価格がこの数年で倍になった。このままでは木質バイオマス(生物資源)の地域内循環の仕組みが成り立たなくなる」と危機感を強める内藤昌典(有)内藤鋼業社長(愛媛同友会会員)。

 内藤氏は愛媛県内子町で地元の未利用材で「愛媛ペレット」を製造し、内子町の「バイオマスタウン構想」と連携して、農業用ハウスや小中学校にペレットボイラーを導入し、学校と連携した環境教育にも力を注ぎ、熱利用を進めています。

 (有)内藤鋼業ではこれらの事業を展開する中で、関連事業だけで5名の雇用を増やしました。

 ところが、木質バイオマスの「発電」事業が、政策的にクローズアップされ広がる中、ペレットの材料である地元未利用材の急激な値上がりで採算が取れなくなってきているといいます。

 資源エネルギー庁の担当官に聞いたところ、「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)制定以降、バイオマス発電の設備認定では、国産未利用材を100%使う設備は1割にも満たない状況」とのことです。

 林野庁の資料では、木質バイオマス発電の認定114件中(国産未利用材41件)、昨年9月まで運転しているのは30件(同4件)ですが、すでに発電に使う未利用材の価格が高騰してきているのです。

木質バイオマス発電の課題

 全国で毎年、約2000万トン分発生しているといわれる未利用材活用の切り札として「木質バイオマス発電」が推進されています。半径50キロ圏内の未利用材を対象とし、5000キロワットの発電所で年間6万トンの木材が使われ、それをチップ化して投入する仕組みです。

 内藤氏は「未利用材は搬出が困難な山奥にもあり、その搬出の仕組みがないのが現状。その搬出コストを考えれば、間伐でなく主伐がすすみ、山がふもとから裸になっていく。5000キロワットの発電施設で年間6万トンを使うとなると、日割りにすると165トン。4トントラックで40回も毎日運び込むことになり、熱効率の悪い生チップを使うので灰も大量に出る。固定価格買取制度も20年という期限付き。木は大きくなるのにそのくらいかかる。一時的に雇用は生まれるかもしれないが、その後はどうなるのか。自治体でも発電所誘致に億単位の予算をつけている。熱利用を優先し、地域内循環を高める施策をすべき」と語気を強めます。

「発電」より効率的な「熱利用」

 「認定している木質バイオマス発電施設の大半は海沿いに建設され、建設廃材や輸入チップとの混焼による発電所が多い」と資源エネルギー庁。

 輸入チップを使っても、国内のエネルギー自給率は上がらず、他国の森林を荒らし自然破壊にもなりかねません。

 「確かに木質バイオマス発電は、蒸気タービンの場合のエネルギー変換効率は20%程度。熱利用では変換効率が80%以上ありますので、熱利用が進めばいいのですが、現実問題としてインフラ整備ができていないという大きな課題があります」と林野庁森林整備部長。

 再生可能エネルギー活用先進の欧州でも、木質バイオマス発電は、森林が荒れ、原材料となる低質材の高騰、発電施設の故障や稼働率の低減などで成功していないといわれます。

 一方で、木質ペレットを使う熱電併給装置がドイツやイタリアで活用されはじめており、小さな地域(400世帯)での地域暖房と地域内電源として活用されることも期待されています。

 未来の地域のあり方を見通した、森林資源の利活用は、地域内循環と中小企業の仕事づくりとあわせて考えていきたいものです。

(終)

みんなの木づかいにより国産材を積極的に利用することで森はこんなに元気に

「中小企業家しんぶん」 2015年 2月 5日号より