あなたの企業は大丈夫!? 「税制」と「個人情報保護」新たな改革

 昨年は消費税増税の影響など経営のさまざまな場面で対応を求められる経営環境の変化が多くありました。今回は「税制」と「個人情報」の2つのテーマで次年度に迫る中小企業の経営環境の変化とは何かを追います。

【税制】 平成27年度税制改正の中小企業関係のポイント

 平成27年度税制改正が1月に閣議決定されました。今国会通過後に実施されます。外形標準課税など一連の中小企業向け増税、雇用促進税制・事業承継税制、消費税を中心に主なポイントを見てみます。

外形標準課税の中小企業けの拡大は見送り~引き続く警戒と取り組みが必要~

 外形標準課税は、資本金1億円以下の中小企業への導入は中小企業団体をはじめとした広い層の反対によって2015年度においては見送られました。しかし次年度以降に復活してくる可能性は否定できません。引き続く警戒と会内での学習や署名などの取り組みが必要です。資本金1億円以下の中小企業の法人税率について所得金額のうち年800万円以下の部分は税率を19%から15%に軽減する措置は2016年度末まで2年延長されました。欠損金繰越控除の利用制限や、減価償却制度を見直して定率法を禁止し定額法のみとすることについても同友会をはじめ多くの中小企業の反対を受けて見送られました。

雇用促進税制、事業承継税制の拡充

 賃上げを促進するとして「所得拡大促進減税」が拡充されます(図1)。従業員への給与総額が2012年度から3%以上増加していれば増加額の10%を法人税額から控除できるよう要件が緩和(現行は5%)されます。2016年度から適用できる見通しです。

 事業承継税制では2代目から3代目に承継する場合の贈与税免除が可能になります。現行では1代目が存命中、2代目が3代目に株式を贈与した場合、猶予されていた贈与税の納税義務が2代目に生じました。2015年度からは納税猶予制度を活用して3代目に再贈与すれば納税義務が免除されます。5年間の雇用の80%維持の要件はこの期間の平均とすることに緩和されました。

 この他に「中小企業・地域」向けとして、東京からの移転や地方企業の拡充等に対してオフィス投資減税や雇用促進税制の特例、地方を訪れる外国人旅行者向けの免税手続きのワンストップ化などが盛り込まれています。

消費税制~中小企業の声を反映した抜本的な制度見直しを~

 課税ベースの拡大に関わるものでは、法人から配当を受けた場合の益金不参入制度が縮減されます(図2)。現行の持ち株比率の基準を見直し、5%以下の場合は20%、3分の1以下の場合は50%、それぞれ税法上益金に不参入となります。ただし3分の1以下の株式からの配当についての負債利子控除を廃止することで「負担を軽減する」としています。

 一方、2017年4月の消費税率10%への引上げは「景気判断条項」を付さずに確実に実施するとし、合わせて消費税転嫁対策特別措置法を2018年9月30日まで延期するとしています。消費税の軽減税率は国民の理解を得た上で10%時に導入するとしました。

 消費税は価格転嫁など本質的な問題を抱えています。政府は「ローカルアベノミクスの主役、地域経済を支える中小企業を支援」としています。であれば、そもそも中小企業経営にとって矛盾の多い消費税や外形標準課税等について当事者である中小企業の声を反映した抜本的な制度見直しが必要です。

付記:2014年から上場株式等の配当にかかる税率が上がりました。大口株主を除く株主に対して2013年まで一律10・147%(所得税+復興特別所得税7・147%、住民税3%)でしたが2014年から一律20・315%(所得税+復興特別所得税15・315%、住民税5%)となりました。申告不要で源泉徴収により課税が終了します。

(中同協事務局 中平智之)

【個人情報】 すべての事業所が「個人情報取扱事業所」に

早急に個人情報保護のルールと事業所あげての体制づくり・体制強化を

 個人情報保護法改正案の骨子が発表されました。いくつかの改正点の中で中小企業への影響で一番大きいものは、5000件以下の個人情報取扱事業者適用除外規定の廃止です。改正されると1件でも個人情報を持っている事業者は個人情報取扱事業者としての義務が生じることとなります。多くのみなさんの会社ではすでに対応されていることでしょう。しかし、個人情報の漏えい事故は減るどころか増加傾向にあります。(グラフ1)

 また、漏えい原因を見てみると、ルール、作業手順の不備や未確立などの組織としての管理ミスとルール、作業手順の不徹底からくる誤操作、紛失・置き忘れなどヒューマンエラーが約8割を占めています。(グラフ2)

 個人情報保護の対応は経営体質の強化とお客様からの信頼度向上につながります。今後、マイナンバー制度の導入に伴い、特定個人情報(個人番号を含む個人情報)を適切に管理していくことが求められています。

 マイナンバーの個人への通知開始(2015年10月)までに、事業所の個人情報保護のルール、体制確立または再確認のため以下の4つのことに着手しましょう。第1に業務の洗い出し、見直しで、個人情報も含めた情報の流れを確認すること、第2に情報管理体制の整備もしくは再確認、第3に従業員の教育、第4に委託先の確認。これらを経営計画に盛り込み、PDCAを確実に実践する強じんな経営体質づくりの一環として位置づけて取り組みましょう。

(中同協事務局 田中みどり)

ルールづくり、体制づくりについては、以下の経済産業省のガイドラインと解説のリーフレットをご参照ください。

「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/downloadfiles/1212guideline.pdf

「事業者の皆さん!!その取り扱いで大丈夫?“個人情報”」
 http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/100401_pamphlet_meti.pdf

『「個人情報」の「取扱いのルール」が改正されました!』
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/downloadfiles/2612pamphlet.pdf

「中小企業家しんぶん」 2015年 3月 5日号より