学校との連携をどのように進めているか

山田社長

(株)山田製作所 代表取締役社長 山田 茂 氏(大阪同友会 経営本部長)

 2月5日に開催された中同協社員教育委員会で(株)山田製作所・山田 茂氏(大阪同友会経営本部長)が報告した大阪同友会の「高校求人部」に関する活動の報告概要を紹介します。

「しんどい学校」の現状

 今回のテーマは「しんどい学校」です。

 何がしんどいのかというと、入学する学生の6割の親がシングルマザーもしくはシングルファーザー。さらに年収200万円以下の家庭が半数以上で、生活保護家庭もその中にはいます。本人も、親も、先生も、地域もしんどい。だからしんどい学校です。府立普通科高校全112校のうち30校が「しんどい学校」になります。

 その生徒のほとんどが家庭の経済状況から大学進学を諦め、さらに就職すら諦めています。なぜなら家計を助けるためにアルバイトをし、入学者の半数が途中退学してしまいます。こうした子たちは「私たちなんて」という自己卑下にいたってしまう。全て先生方から聞いたものです。

キャリア支援教育を通じての気づき

 2011年に高校の校長先生方との懇談が実現し、それがきっかけで平野高校から講演依頼がありました。学校側は全校生徒を相手に1人の経営者が報告するような形式を望んでいました。しかし、同友会側から10人以下のグループによるグループ討論を提案しました。

 こうしたキャリア支援教育を通じて、生徒の現状を知り企業の社員教育をあらためて見つめなおすことになりました。生徒の中に会員企業の社員の息子さんがいたのです。

 ハッ!と気付きました。これまで若者や子どもの現状について「学校や親は何をしている?」と経営者の視点から言いあっていましたが、その「親」が中小企業で社員として働いている。裏を返せば「中小企業は何をしているの?」です。

 生徒には「仕事はしんどい」という考えがあります。家庭を見る暇もないほどに必死に働く親を見ているから当然です。しかし、その親の勤め先は中小企業です。自社はどうなんだ!と省みる必要に気づきます。

働くとは周りの人と一緒に幸せになるためのものであると私たちから若者に仕事を通じて伝えていく必要があります。

 校長先生との懇談会も今年度で4回目になります。夏休みにアルバイトでしっかりと働いてきた子どもを「そんなに稼いだら生活保護が外れるだろ」と怒鳴りつけ殴る親がいるそうです。こうした事例を校長先生から直に話していただいています。

 校長先生は卒業後の生徒たちの姿が全く見えず、「生徒に何を持たせて卒業させればいいのか」と非常に不安に感じています。だからこそ経営者の私たちが「何も必要ない、私たち企業がしっかり育てます」と自信を持って言えることが大切です。

定期採用と社員教育が中小企業の存在意義

 「高校求人部」の活動を通して、経営者の役割は地域の教育に直結すると実感しました。新卒採用に取り組む会員も増えています。人を育てるという思いのある中小企業の経営者が増えていけば地域は変わります。

 「高校求人部」の活動は経営労働や共同求人の取り組みにつながっていきます。地域を変える憲章・条例運動にもつながると考え、継続していきたいです。

「中小企業家しんぶん」 2015年 4月 5日号より