労使見解の精神を継承するためにー労使見解を学ぶ研修会開催【京都】

【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】55

京都同友会

 京都同友会は「労使見解」発表から40年を迎える今年、「労使見解を学ぶ研修会」を3回シリーズで開催しました。

 各講座は、上野修氏(京都同友会相談役・中同協元経営労働委員長)が中心に座り、4名の経営者が自身の体験を通じて「人を生かす経営」について深め合いました。

 また、報告の中では社員は経費ではなく財産であり、社員が何のために働いているかを考えることができる企業づくりについて触れました。

 第1回(5月27日)は渡邊博子氏((株)スリーシー代表取締役)との対談です。同社は社員全員がシングルマザーの企業です。お互いの事情に共感でき安心して働ける職場は、失いたくない職場となり自律的社員への成長を促します。

 母親は大切な子どもたちのために働き、子どもたちには良い母親の背中を見て育ってほしい。それが(株)スリーシーの人を生かす経営であり、地域に必要とされる企業づくりです。また、経営者の責任と自己姿勢のあり方、厳しいときに厳しさを共有できる社内体制の構築の重要性についても意見交換されました。

 第2回(6月12日)は井上誠二氏〔建都住宅販売(株)代表取締役〕、田中久喜氏〔税理士法人イデア代表社員・税理士〕との鼎談です。「見解」の歴史を振り返り、生い立ちから今日的意義までを語り合いました。

 第3回(7月24日)は石田登氏〔(株)ワールドサービス代表取締役〕が経営体験を報告。度重なる不運により倒産危機に直面し、「もうあかん」と何度も経営をあきらめかけましたが、絶対に会社を倒産させないという強い意志で持ちこたえます。そのとき相談相手になったのが同友会の仲間でした。先輩会員からのアドバイスを受け、社員との本音の話し合いに臨んだ結果、全社一丸での立て直し体制ができあがります。必ず企業を再生させるという社員の約束手形のおかげで、各方面との交渉ができたことが語られました。

 最終講では上野修氏が3講座を通してのまとめを行い、「労使見解の精神の継承と、労使が異体同心となり中小企業憲章制定に取り組めるような新たな次元の関係づくりをすすめましょう」と締めくくりました。

 「人を生かす経営」の「人」とは単に社員に限ったことではなく、取引先や顧客まで、共に生きる人と自社の未来や地域について語り合えるような関係づくりが人を生かすということではないでしょうか。そのための、経営理念とそれに基づく指針書の必要性を再認識し、明日からの経営へ決意を新たにする機会となりました。

「中小企業家しんぶん」 2015年 9月 5日号より