【同友会景況調査(DOR)概要(2015年7~9月期)】明・暗まだら模様、先行き楽観を許さず

〈調査要項〉

調査時点 2015年9月1~15日
調査対象 2,446 社 
回答企業 1,030社(回答率42.1%)(建設180社、製造業332社、流通・商業307社、サービス業199社)
平均従業員数 (1)37.4人(役員含む・正規従業員)(2)27.7人(臨時・パート・アルバイト)

※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

景気は横ばい圏で推移

 内閣府が発表した2015年4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は年率換算で1.2%減、マイナス成長は2014年7~9月期以来34半期ぶり。日銀の9月短観(全国企業短期経済観測調査)では企業規模や産業により改善・悪化が紛れていますが、先行きは全ての規模・産業で悪化を見込んでいます。

 DORでも業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は△2→2と改善しましたが、改善の原因は「悪い」「やや悪い」の比率が低下したことによる結果であり、回復に向かう力強さはみられません。次期の見込みも2→6と改善傾向にありますが、「横ばい」が増えたことによる改善であり、回復基調にあるとは言い難く、先行き不透明感が拭えません(図1)。

景況はまだら模様

 業況水準DIの業種別では、建設業(△2→15)、サービス業(1→9)で改善、製造業(△7→△10)、流通・商業(3→2)で悪化しました。地域別では近畿が△4→△18と大幅に悪化、他の地域は改善傾向にあるのとは対照的な動きを示しています。企業規模別では20人未満と20人以上50人未満で改善した一方、50人以上100人未満と横ばい、100人以上は悪化しました(図2)。このように、業種・地域・規模ごとに異なった動きを示し、景況はまだら模様を呈しています。

売上高DI、経常利益DIは好転

 売上高DI(「増加」-「悪化」割合)は全業種で好転、そのうち建設業と流通・商業の好転が目立っています。地域経済圏別では近畿の悪化、停滞感が目立ちます。企業規模別でも全階層での好転をみましたが、20人以上50人未満の好転以外は横ばいともいえる回復幅に留まっています。経常利益DI(「増加」-「悪化」割合)も全業種で好転しました。次期見込みは、売上高DI、経常利益DIともに横ばい見込みとなっています。

仕入単価の上昇圧力は緩和

 資金繰りの余裕感はわずかに縮小し、資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は、10→8と2ポイント余裕幅が縮小しました。

 仕入単価の上昇圧力は引き続き緩和されていますが、売上・客単価の上昇への勢いも弱まっています(図3)。

 1人当たり売上高DI(「増加」-「減少」割合)、1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)は消費増税後に急落した前年同期と比較して、緩やかながら回復傾向にあります。一方、人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は2013年10~12月期に△31となって以降、△30前後の強い不足感が続いており、なかでも建設業とサービス業で不足感が突出しています(図4)。

設備投資、企業規模による差は拡大傾向

 今期の設備投資実施割合は33.4%と設備投資自体は一定の水準にありますが、実施目的に着目してみると「能力増強」、「維持補修」のいずれの割合も上昇、積極性と消極性が混在した状況となっています。設備投資の実施割合は企業規模における差が大きく、20人未満で25.9%、20人以上50人未満は38.2%、50人以上100 人未満は34.3%、100人以上は58.0%と、100人を境に傾向が分かれています(図5)。

「人」に関する課題への継続的対応を

 経営上の問題点として「同業者相互の価格競争の激化」、「民間需要の停滞」への指摘割合が高い傾向は続く一方で、「人材確保難」、「人件費上昇」への傾向も強まっています。とりわけ建設業とサービス業で警戒感を強めています(図6)。山積する経営課題への対策は、仕事づくりへの積極的な展開と人材確保、社員教育などの「人」に関する課題への継続的な対応がより重要になっています。

求められる企業ドメインの明確化

 経営上の力点では「新規受注(顧客)の確保」、「付加価値の増大」、「社員教育」、「人材確保」が上位4 項目となっています。今日のデフレ不況下での需要動向の二極化(需要低迷下での低価格化と高級化)を前提とすると、自社のユーザーの購買動機に対応した市場開拓が不可欠であり、その要は社員の自主的な市場分析・顧客管理と業務内容の見直し・改善にあります。自社の企業ドメインの明確化をもとに、より一層の業態・経営システムの改善を進めることが求められています。

今後の取り組みに関する会員企業の声(「経営上の努力」記述回答より)

◎品質の向上につとめている(口コミが多くなっている)。今後は、(1)事業継承のため技術、技能の向上につとめ、(2)剪定枝の堆肥からエネルギー化の研究、(3)お客様からの引取資材を利用した循環化の研究を予定しています(富山、造園工事及び委託、年間管理、メンテナンス)

◎主な取引先への値上げ通知をしたところ、取引が止まったり回数が減ったりで、困りました。今後は問屋に頼らずに自社での販売ルートの構築を考えています(高知、食品製造業)

「中小企業家しんぶん」 2015年 11月 5日号より