多くの「よい会社」づくりにむけて「滋賀でいちばん大切にしたい会社」認定と「月刊・共育ち」

【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】63

滋賀同友会

 滋賀同友会では、毎年「経営指針を創る会」を開催し、現在37期目が開講されています。卒業生は400名以上に上りますが、そのうち「指針経営」を継続できている会員企業は10%程度どまりなのが実態です。この率をさらに向上させ、一層多くの「よい会社」を輩出していくことが課題となっています。

 経営労働委員会でこの問題の原因を分析したところ、(1)「よい会社」の具体的な姿が明確でなく、自社の現状値や、目標との差を把握できない。(2)社内での経営者と社員の「共育ち」の取り組みが具体的に進められないの2点が主な原因ではないかと考えられました。

 そこで一部の会員が実施していた「従業員満足度アンケート」をベースにした「滋賀でいちばん大切にしたい会社」認定制度を2010年度に発足させました。「よい会社」の条件を「社員満足度80%以上」であることと、12のカテゴリーで示される企業の目指すべき姿への取り組みの状況の両面で評価し、認定するものです。すでに8社が認定を受けメディアの取材や、会内外での講演活動など、同友会運動を広める役割を果たしています。

 「日本でいちばん大切にしたい会社」の坂本光司先生にもご評価いただき、いくつかの認定企業にご訪問いただきました。今後さらに多数の「滋賀いち」企業認定のために「創る会」の卒業生を中心に、「滋賀いちアンケート」の実施を進め、これまでに約20社がアンケートを実施しました。引き続き挑戦企業を増やす努力をしていきたいと思います。

 一方で、もう1つの課題である社内での「共育ち」推進については、2015年6月からテキスト「月刊・共育ち」を発行し、取り組みを始めています。同友会的な企業づくりが進んでいる会社を調査したところ、そのほとんどの会社では社内で、経営者と社員がともに、単なるスキル教育だけでなく、経営理念に基づいた価値観、考え方などについても時間をかけて学びあっていることが分かりました。

 しかしこのような勉強会を継続して開催することは実際にはなかなか難しいことです。適切なテキストを作ったり、探してきたりすることがまず問題です。そのうえ毎月、定期的に全員参加の時間をとることも大変です。さらにその成果がすぐに目に見えてくるわけでもありません。

 そこでA4裏表印刷、3000文字程度のテキストを発行し、経営者と社員が定期的に一堂に集まって、読み合わせをして、グループディスカッションでお互いの見方・考え方の違いを理解しあい、会社としてどうあるべきなのか?どうしていくべきなのかをじっくりと深めあっていこうというものです。

 現在20社がこのテキストを利用しています。これまでに「たかがあいさつ、されどあいさつ」「働くって何?」「うちの会社のチームワークで勝てますか?」「セイリ・セイトンを考える」「ホウレンソウ」「お客様はわが社に満足しておられるでしょうか?」「それは私の仕事ではありません」「『思い込み』を考える」など身近なテーマを取り上げてきました。

 また同時に「リーダー用ガイドシート」を添付して、「このガイドシートの使い方」「グループ討論の進め方」などのアドバイスも行っています。さらに特徴的なことは「クロージングガイド~今月の具体化」として、テキストの内容やグループ討論の結果を踏まえて何らかの具体的行動や、改善を行うことを提案していることです。会社を変革していくためには、話だけで分かったつもりになるのではなく、具体的に行動を変えて行くことが大切だと考えるからです。しかしこの「月刊・共育ち」も継続に当たっては執筆者の不足が最大のネックです。執筆にご協力いただける方はぜひ滋賀同友会までお問い合わせください。

滋賀同友会副代表理事 宮川バネ(株)代表取締役会長 宮川 卓也

「中小企業家しんぶん」 2016年 3月 5日号より