新卒採用 応募者不足に直面~「同友会景況調査(DOR)2015年10~12月期」オプション調査より

採用・人材確保への取り組み

 人材不足への警戒感が高まっています。中同協企業環境研究センターで四半期に一度実施している同友会景況調査(DOR)でも、2011年7~9月期以降人手不足感が高まり、ここ2年ほど高止まりが続いています。この流れを受け、景況調査の対象企業に2015年4月以降の採用・人材確保への取り組みに関してアンケート調査を実施しました。

〈調査要項〉

調査時点 2015年12月1~10日
対象 企業中小企業家同友会会員
調査の方法 郵送により自計記入を求めた
回答企業数 2,423社より967社の回答をえた(回答数39.9%)(建設業176社、製造業331社、流通・商業294社、サービス業166社)
平均従業員数 役員を含む正規従業員37.64人 臨時・パート・アルバイトの数28.97人

中途採用約5割、新卒採用(大学等)約4割実施

 どのような採用活動をしているかという設問では、「中途採用」が47%、「新卒採用(大学・大学院生、専門学校生)」が39%、「新卒採用(高校生)」が21%、「パート・アルバイト・が20%、「採用予定なし」が16%、「パート・アルバイト社員の正規雇用への登用」が6%、「定年退職者の再雇用」が9%という結果となりました(図1)。最も多いのは中途採用ですが、新卒採用は大学生などは約4割、高校生は約2割の企業が取り組んでいることは注目すべき点です。

採用理由「経営指針に基づく計画的採用」トップ

 次に採用に取り組む理由を尋ねたところ、「経営指針に基づく計画的な採用」が34%、続いて「業務多忙による人材不足」27%、「営業力強化のための採用」が27%、「退職による人材不足」が26%と並び、「採用予定なし」は19%でした(図2)。

企業規模・業種によって採用活動の傾向が異なる

 また、採用活動は企業規模によって傾向が異なっています。採用に対する積極性は企業規模との相関が見られました。企業規模が大きくなるほど計画的な採用、営業力強化のための採用に意欲的な傾向が見られます(図3)。

 また、経営上の問題点で「人材不足」を指摘する割合が高く危機感の強い「建設業」「サービス業」は、本調査でも採用に積極的に対応している結果となりました(図4)。

新卒採用見込み「予定通り」「上回る」が約半数

 新卒採用を行う企業に見込みを尋ねたところ、「予定通り」が45%、「予定を下回る」が29%、「まだわからない」が22%、「予定より上回る」が4%となりました。

 「予定通り」、「上回る」を合わせて約半数にとどまり、新卒採用の厳しい状況が示されています(図5)。

予定より下回る理由「応募者が少ない」72%

 また、「予定人数より下回る」と回答した企業の下回った理由として、「応募者数が少ない」が72%と断トツ、次に「採用基準に合う人がいない」14%、「内定辞退が多い」12%と続きました(図6)。

 新卒者の就職活動日程変更の影響で、応募者数の減少、内定辞退も増加するなど混乱があり、採用計画に支障が生じている実情が浮かび上がりました。共同求人サイト「Jobway」の登録学生数も4年連続で減少となるなど、新卒採用の厳しさが増すなかで、中小企業の魅力を学生に伝えるために大学との連携の動きを強めている同友会もあります。若者に魅力ある企業づくりをするために採用と教育を一環させた取り組みを強化していくことも重要です。

中途、パート・アルバイトの確保も課題

 同様に中途採用に取り組む企業に採用状況を尋ねたところ、「採用できた」が51%、「募集中」が41%、「応募がない」は8%でした。パート・アルバイト採用に取り組む企業は「採用できた」が44%、「募集中」が51%、「応募がない」が5%でした(図7・8)。新卒採用ほど応募に対する厳しさはありませんが、継続して募集する企業の割合も高く、人材確保への関心が高いことがうかがえます。

経営指針に基づいて将来を見据えた計画を

 「社員の平均年齢が上がり、事業継承を考えると、若手社員を採用して育成していくことが急務(静岡、流通・商業)」と将来を見据えた採用計画の重要性はいっそう高まっていくでしょう。また、「来期へ向けた計画に際し、経営者、社員全体での計画策定にかかわる仕組みづくりに注力(宮城、サービス業)」というように、社員とともに採用計画を立て、会社全体で取り組むことも必要です。

 共同求人活動と社員教育活動を経営指針の実践の場として一連のものとして捉え、強い体質の企業づくりをめざす活動を進めていきましょう。同時に、就職活動ルールに関して企業・学生・大学の代表が参加できる協議の場の設定など、中小企業の実態と声がルールづくりに反映される仕組みをつくっていくことも求められています。

「中小企業家しんぶん」 2016年 4月 5日号より