成長には教育

 9月30日に2016年版労働経済白書で「企業の教育訓練費用が欧米より少ないのが生産性低迷の原因」と指摘、「教育訓練支出の増加率は2006年から10年間で米国・ドイツ・英国はプラスなのに対し、日本は10%超のマイナスに。01~05年も大幅マイナスとさらにマイナス」と報じられました。実際厚生労働省のデータからは1980年代から減少してきているのが確認できます。(表1)それよりはっきりと減少しているのは、9月15日にOECDが「教育への公的支出で、日本はGDP対比3.2%と33カ国中最下位のハンガリー(3.1%)に次ぐ32位」と発表、平均は4.5%です。一方私的費用を合わせた教育支出合計では日本はOECDの平均を上回り、家計に重い負担となっています。「1位ノルウェー6.2%、デンマーク6.1%、勤続15年以上の教員給与は各国平均は増加の中で日本のみ05年から14年で7%減」と報じられたように国が教育に金をかけなくなってきたことが見て取れます。公的支出の推移を表2で見てみるとこれも1980年代にかけて伸びて、1990年代バブル崩壊以降低下してきており、財務省の今後の見通しでは少子化でさらに減少が見込まれています。これを日本のGDPの推移と合わせてみると80年代までの高度成長からバブル崩壊以降の0~2%の低成長と教育費の低下は明確に相関関係を示しています。

 世界では、所得格差は経済成長を損なっているとのIMFの公表に続いて、OECDが2014年12月に「過去30年で富裕層と貧困層の格差が最大に。25年間で8.5%もGDPを押し下げている」と発表、「この悪影響の原因は下位40%に及ぶ貧困層が(日本だと下位90%が)教育に投資できないため成長を阻害している」と結論づけています。反対に言えば「教育に投資すること(人づくり)が経済成長に貢献する」と言えますので、国も企業も教育にお金をかけていくことが必要とわかるデータです。

「中小企業家しんぶん」 2016年 10月 25日号より