【知っておきたい新型コロナ対策】vol.1 職場で感染者が出た場合の対応

OHサポート(株) 代表/産業医 今井 鉄平(神奈川)

今回より10回にわたって知っておきたい新型コロナウイルスの対策情報を連載で紹介します。1回目のテーマは「職場で感染者が出た場合の対応」についてです。

新型コロナウイルス感染症の流行は、5月下旬の緊急事態宣言後、7月ごろより再び増加の一途を辿るようになりました。8月21日時点で、国内の感染者数が6万人を超えております。このような中、職場で感染者や濃厚接触者が出ることが現実的な問題となりつつあり、実際に私が産業医として関わる企業からも感染者対応の相談を受ける機会が増えてきました。

従業員が感染した場合、感染者本人は医療機関等の指示により、入院治療、もしくは宿泊施設か自宅での療養を行うことになります。また、感染を確認した医療機関から保健所に報告がなされます。職場としては、保健所とのスムーズな連携のため、感染者がいる部署の「座席表」、職場内の「接触者記録」を用意しておきましょう。接触者記録では、感染者の発症2日前からの会議・ランチ・会食などを共にした方を確認しておくことが重要です。

感染者の周囲にいた従業員が濃厚接触者と判断された場合、保健所の指示に従い感染防止の措置を講じることになります。具体的には潜伏期に相当する14日間は対人接触を避け、自宅待機・在宅勤務等を求めるようにしましょう。なお、濃厚接触者には全員PCR検査が行われますが、たとえ結果が陰性であっても14日間の自宅待機等は必要となります。PCR検査が陰性であることが感染していないことを証明するものではないことに十分注意しましょう。

職場の消毒ですが、保健所からの指示が特にない場合、最低一時間以上の換気を行った上で、感染者の執務エリア(感染者の席から半径2メートル程度の範囲)を、アルコール消毒液(60%~95%)もしくは次亜塩素酸ナトリウム(0・05%)を用いて拭き取ります。また、トイレ、喫煙室、休憩室や食堂などの使用があった場合は該当エリアの消毒も追加実施します。なお、消毒担当者自身の感染防護のため、手袋・マスクを着用の上で行うようにしましょう。

最後に、感染者の職場復帰の目安ですが、発症から10日が経過していること、および症状消失から3日が経過していることの2つを満たすことが重要です。また、復職後も1週間程度は、毎日の健康観察、マスクの着用、対人距離を2メートル以上保つことを徹底し、体調不良時には出社を控えるようにしましょう。

〈プロフィール〉
今井 鉄平(OHサポート(株)代表/産業医)

産業医科大学医学部医学科卒業。大手企業での15年以上にわたる専属産業医勤務を経て、2018年4月にOHサポート株式会社を開設、中小企業向けの産業医サービス提供を主業務としている。日本産業衛生学会専門医、医学博士。

「中小企業家しんぶん」 2020年 9月 15日号より