【会社を成長させる人材採用! 知っておきたい役立つポイント】社員が定着し活躍する仕組みづくり (株)エム・ソフト 顧問・社会保険労務士 西 秀樹(東京)

 コロナ禍での採用・就職活動では企業も学生も手探りが続いています。そんな中で大きく変化している採用活動の基本を今一度確認し、人を生かす経営の実践につなげていくことが大切です。連載「会社を成長させる人材採用! 知っておきたい役立つポイント」の最終回は、「社員が定着し活躍する仕組みづくり」です。

 学生が採用活動する際に「青少年雇用情報シート」の中で、3年以内の離職率、平均勤続年数、職場への定着の促進に関する取り組みの実施状況などに注目しています。まずは、企業でこのシートを作成し、企業が属する業界やその地域と比較したことはありますか。比較することで統計的ではありますが、自社のおかれている状況を確認することができます。

 もし、離職率が高い場合には、何らかの問題があり、その問題を、採用した社員に問題があると転嫁し、自社内に「問題あり」と認識していない経営者が多く存在します。

 社員が定着する職場環境を作るためには、現状に問題があることを認め、解決しなければ企業の成長はないと素直に認めることから始まるのではないでしょうか。

 今回のテーマは「社員が定着し活躍する仕組みづくり」ですが、まずは社員が離職する原因追及から始めることがポイントです。現在は、さまざまな価値観をもった社員を雇用し、全員を画一的に共育するやり方では、費用対効果は薄れています。

 社員は、入社前に「会社に入って活躍したい」「この会社には将来がありそう」「素敵な仲間と出会えそう」「キャリアアップができそう」「成長できそう」など期待に胸膨らませ入社します。この期待は、社員一人ひとり異なります。今の時代、社員を定着させるためには、「個」に着眼し、一人ひとりの社員の期待に応える企業経営が必要になってきています。ハーズバーグの動機づけ・衛生理論では、衛生要因である賃金は動機づけにならず、毎年昇給・賞与が増加しても、それに満足する人は少なく、むしろ他者(社)との比較において不満になる傾向があると述べています。動機づけ要因は、仕事そのものから生み出される成長や責任、権限、他者からの承認、目標の達成などです。

 労働施策総合推進法第3条には、職務内容、その必要な能力を明らかにし、公正に評価し処遇に反映させること。つまりは、社員に何をやってもらうのかその役割と必要となる職務能力を明らかにし、上位職に上がるために必要な道を会社が示し、上位職に上がるための社員共育プランを提示することが企業にとって重要であると思います。

〈プロフィール〉
西 秀樹氏
神奈川大学法学部法律学科卒業。旅行業界人事、外資系コンサル会社を経て、現在は、新卒採用、人事評価制度策定、就業規則などの作成を主たる業務としている。

「中小企業家しんぶん」 2021年 11月 15日号より