人材不足の見通し―年齢別労働力人口

 厚生労働省は、2022年9月に令和4年(2022年)労働経済白書を発表しました。2021年はコロナ禍で緊急事態宣言などが発出され、雇用情勢は一進一退の動きの中、10月以降は回復に向けた動きがみられました。雇用者数では女性の正規雇用労働者数で2019年1,169万人、2020年1,204万人、2021年1,233万人と堅調に増加しています。一方で、感染拡大前から続く人手不足の状況が再びみられる中、転職者数は2019年353万人、2020年321万人、2021年290万人と前年に続き大幅に減少するなど、転職者の労働市場の動きには停滞がみられるとあります。

 同白書では「年齢階級別労働力人口」の統計表を見ることができます。2020年の労働力人口(就業者数+完全失業者数)は、6,868万人となっています(表)。年齢別に15~24歳では人口1,214万人のうち590万人で労働力人口比率は48.6%です。この15~24歳までの世代が25歳を迎えるまでに労働力人口率が88.6%となると仮定すると、約485万人がこれから労働力人口として働き始めます。

 一方で、55~64歳までの労働力人口は1,204万人、これから10年以内に退職などを迎える世代です。65歳以上の就業率は2020年で25.5%となっており、55~64歳の就業率は78.7%ですので、労働力人口1,204万人のうち、約53.2%(78.7%―25.5%)である約640万人が退職などで労働力人口から抜けてしまいます。

 このように仮定すると、現在55歳~64歳までの労働人口から抜けてしまう人口の約640万人に対して、これから働くだろうと思われる15~24歳までの人口は推計した通り約485万人で、今後5年~10年で150万人以上の労働力が足りなくなると予想されます。

 今後10年以上を見据えると45~54歳までの労働力人口1,626万人に対して、15歳未満の子どもの数は1,512万人です。45~54歳という10歳分の労働力人口より、15歳未満の子どもの全体人口の方が少なくなっています。

 企業では、長中期の人事戦略を描く必要がでてきています。定期的な新卒採用や技術継承、業務の引継ぎなどを考えて、採用・育成に取り組む必要があります。また、労働力人口にカウントされていない人、いわゆる就労困難者を働く場に戻すことも重要です。多様な働き方、柔軟な働き方も重要になってきています。

「中小企業家しんぶん」 2022年 12月 25日号より